杖や介護用ベッドなどの福祉用具は、高齢者の体の一部ともいえる大切なツールです。そんなツールを扱うダスキンヘルスレントの各ステーションは、高齢者の生活を支えるプロが集う場所。いわば「ささえびと」たちの仕事場です。このシリーズでは、「ささえびと」たちにとって忘れられないご利用者とのエピソードを紹介していきます。
最後の時まで名前を呼んでくれたご利用者
数年前、独居のご利用者様を担当させて頂いたことがありました。「透析に通っているうちに体力が落ち、自宅での暮らしが不便になってきた」ということだったので、まずは、あがりかまちやトイレにレンタルの手すりを付けることを提案。その後、体の状況に応じて、介護ベッドなども提案させて頂きました。
特に記憶に残っているのは、立ったり座ったりする際に使う昇降座椅子を提案した時です。最初は「邪魔にならへんの?」と心配なさっていましたが、ちょっと試して頂いただけで、便利さを理解されました。実際にご自宅で使われるようになってからも「昇降座椅子があるおかげで、好きなものを自分で買いに行ける。家に帰ってこたつで暖まることもできる。自分なりの生活を続けることができている」と、とても喜んでいらっしゃいました。
独居のご利用者様ということもあり、道具の交換や調整が必要な時以外でも、できるだけ訪問し、その様子を見守るようにしていました。訪問といってもアポなしですから長く話すわけにはいきません。せいぜい、玄関先で「調子はいかがですか?」などと一言、二言、言葉を交わす程度。まさに「顔を出す」だけでしたが、それでも、ずいぶんうれしそうなご様子だったと記憶しています。
その方が亡くなられたのは病院でした。亡くなられた後、福祉用具を引き上げるためにご自宅に伺った際、ご家族から「病院で息を引き取る時まで『優凛(ゆうりん)さん、優凛さん』と、言っていましたよ」とお聞きしました。
いつも一つの仕事を終えるたび、「この対応や提案でよかったのか」と悩み続けることばかりですが、この時だけは、自分のなした仕事に得心することができました。そして、いつも自分自身やスタッフに言い聞かせている「目先の利益を求めに行くのではなく、よろこびの種をまきに行く」ということを、少しだけ実現できたようにも感じられました。
- 話し手
- ダスキンヘルスレント・ 枚方ステーション
店長・伊藤優凛さん