杖や介護用ベッドなどの福祉用具は、高齢者の体の一部ともいえる大切なツールです。そんなツールを扱うダスキンヘルスレントの各ステーションは、高齢者の生活を支えるプロが集う場所。いわば「ささえびと」たちの仕事場です。このシリーズでは、「ささえびと」たちにとって忘れられないご利用者とのエピソードを紹介していきます。
「その人らしく生きるお手伝い」を実感させてくれた言葉
8年ほど前、介助式の車いすを使っている女性を担当させてもらったことがありました。介助されていたのはご主人です。とても仲睦まじいご夫婦で、よくご主人が車いすを押して買い物や散策に出かけられていました。
ある日、奥様が、ふと、こんなことをおっしゃいました。
「主人は買い物とかに連れて行ってくれるのだけど…。『ゆっくり見たいなあ』と思っている場所は、すーって、通りすぎちゃうのよね。でも、よくしてもらっているから言えないのよ」
この言葉をお聞きした時、電動車いすの活用を思いつきました。ただ、すぐに提案するのはためらわれました。電動車いすは介助式の車いすよりもずいぶん「高い」商品です。それだけに、提案を前向きに受け止めてもらえるか、不安があったのです。それでも、もしかしたらという気持ちで、後日、電動車いすを提案しました。もちろん、ご主人にもご理解を頂いた上でのことです。
納入から一週間後、話を伺ったところ、「自分のペースで納得して買い物ができるようになりました」「主婦としての仕事を取り戻したように感じています」と、おっしゃっていただけました。そして、「久しぶりにほほに風を感じることもできました。これがとてもうれしかったのよ」とも。
福祉用具の仕事をして初めて「その人らしく生きるお手伝いをできた」と実感できた瞬間でした。そして福祉用具は、介護する人の体の負担だけでなく、介護される人の心の負担をも軽くできることを確信しました。
- 話し手
- ダスキンヘルスレント・ 東松山ステーション
店長・飯田安彦さん