
以前に、小さな村で保健師という仕事をしていました。
4000人位の小さな村です。
保健師という仕事は、その地域で生活しているすべての方の健康を守る仕事です。
医療費を下げることも目的の一つです。
私が勤めた村は、その周辺地域では一番医療費が安く、ほかの地域から行政職員が視察に来るくらい、健康な方々がたくさんいる地域でした。
保健師としてはとてもありがたいことでしたが、残念ながら、保健師が何か特別に役割を果たしていたというわけではありませんでした。
住民の方々の意識を高めてもらうために、何か特別なことをしたわけではなく、それぞれの方が健康だった。という結果でした。
というのも、人口の80%以上の方が農業を営まれており、日の出とともに起き、
夜更かしもしない。住民同士がみんな親戚みたいに仲良しで、関心を寄せあっている地域でした。常に誰かが、誰かの役に立っていました。
子育て世代は畑を守り、おばあちゃん世代は孫の世話でいつも働いています。
一方で、80歳を過ぎると、老人クラブが引退になってしまい、私たち保健師の課題は「することがなくなってしまった高齢者」の皆さんにどう役に立ってもらえるかということでした。
保健師が個人個人のお宅を訪問し、お話ししたり、通所のサービスに通うことで
居場所が守られていました。
村には、スナックが一軒と診療所、高齢者のための施設が1か所づつあるだけでした。
健康でないと生活できない村と言われれば、そうかもしれません。
でも、ほかの地域との平均寿命にも差がなく、病院を必要とせずに生涯現役で過ごされていました。
生活のリズム、運動、コミュニケーションのある暮らしが人の健康を守ってくれると信じるきっかけになった観察でした。




