
保健師でお仕事をしていた頃の話。
高齢者お2人暮らしだったご主人が脳梗塞のために入院しました。
パキパキと介護をこなす奥様の事をだれも心配していなかったある日。
近隣の方々が、役場に怒ってやってきました。「あのばあさん変だ!
人を泥棒扱いしたり、ポストに拝んでいたりする。気味が悪い。役場で何とかしてくれ!」
語気荒く数人の住民の方々が訴えに来ました。
もともと友人だったその方々にしてみたら、お友達に泥棒扱いされて、気分を害さないはずはありませんし、ショックだったことでしょう。
奥様の認知症の始まりでした。
娘さんは車で1時間のところに住んでいて、お仕事をしているために中々帰ってくることができません。
介護保険サービスの提供者の事も、泥棒扱いしてしまうその方ですが、何度もお宅に伺い、利用を承諾していただきました。
認知症の理解が十分でなく、中々ケアが難しい状況でしたが、認知症についてのお話を繰り返しさせていただき、地域としてどのように見守っていくか、考えていくことになりました。
全ての住民さんにアンケートを行いました。回収率100%。つながりが活きている証です。
そして、地域のご意見番の方々から出たアンケートの結果に対する感想は
「他人ごとじゃない。」
閉じこもりと定義された方々が、65歳以上の高齢者の70%でした。
バスが機能していないこと。電車が無いこと。外出するには、お子さんたちに手伝ってもらう必要があったこと。様々な要因から外出することが難しく、人とコミュニケーションを取れない状況がありました。
地域で、イベントを開催することに決めました。
参加者なんと80名内40名がボランティアです。地域で生活する65歳以上の方の殆どが参加してくださり、ボランティアの方々も積極的に参加してくださいました。
嵐が起こった日。
ボランティアの皆さんは自然発生的に、参加者の皆さんに声掛けをし、電話で連絡をしました。
参加者の皆さんはこの会があって本当に良かった。誰かが来てくれるとわかってた。安心できた。地域で行うイベントの目的はもちろん楽しむこと。でも、効果として現れたのは、「住みやすい地域」というものでした。
都心部で地域づくりがこんなにうまくいくことは稀かもしれません。
始まりは、コミュニケーションが取れないことへの気づきでした。
そして、できることを皆で探すことでした。
同じ形でなくても、ご自身の周囲につながりを生み出すことで安心を得られそうです。




