
12年前から毎週1回Yさん宅に生活援助のサービスに入っています。
ここ数年、彼女の頭から離れないのは自分の死後の財産相続のこと。
Yさんには子どもがいません。15年ほど前に夫を亡くし、たった一人の兄も数年前に亡くしています。最も血縁が濃いのは、亡くなった兄の子どもたちなので、法的にはYさんの財産のすべては彼らに相続されることになります。
ところが、Yさんは、これまで自分をないがしろにしてきた彼らに対して、一銭たりとも財産を渡したくないのです。信頼している唯一の身内である夫の甥に、すべて相続したいと考えています。そのためには法的効力のある遺言を作成しなければならないのですが、それが彼女にとっては、かなりの難関のよう。
遺言には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があるそうです。秘密証書遺言はほとんど用いられないので、他の2つについて簡単に説明します。
自筆証書遺言は、遺言者が内容、日付、氏名を自書し押印した遺言。書き方については厳格な方式が定められており、それを守らないと無効になってしまう危険性が。また、本人の死後、家庭裁判所で検認手続が必要で、自分でするのが難しい場合は弁護士に依頼しなければなりません。そうなると時間もお金もかかります。
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成するため、無効になるリスクはかなり低くなりますし、家庭裁判所の検認は不要なので、手間とお金の面でもメリットが。
「公証役場に行って、まずは相談してみたら」とYさんに提案しているのですが、行動に出られないまま早2~3年。ひとり暮らしの高齢者が法律的な問題に対峙し、行動起こすのは、なかなかハードルが高いことなのかもしれません。




