
アルコール依存症の友人がいました。
頻繁に電話をかけてきて、多いときには一日に4~5回も。そのつど長電話につきあわされました。居留守を使ってもケータイにまでかけてくるので電話から逃げられません。精神的にまいってしまっている私への配慮など一切なし。彼女いわく「何もすることがない。退屈だ」。自分の気持ち次第で退屈ではない時間は作れるはずなのに、なぜ彼女は貴重な時間を飲酒と電話のみに捧げているのでしょう。
高齢者のアルコール依存症が増えているそうです。
若い頃からアルコール依存症だったにも関わらず治療を受けずに今に至る高齢者もいますが、定年後の人生設計を描けずに酒に逃げるというケースも。私の友人は現役ですが、明らかに後者のケースです。
いくら諭しても叱っても「断酒をしたら何を楽しみに生きていけばいいのか」と嘆くのですが、専門家によれば問題はここにあるとか。アルコール依存症の人は、酒を飲むことが目的になって人生の方向性を見失っているのです。高齢者の場合は、生きる目標をどうやって作っていくかが最も重要な治療の課題だそうですが、彼女も同様だと思います。でも、生きる目標は他人が与えるものではなく、本人が気づくしかありません。
アルコール依存症は、消化器系をはじめ多くの病気や合併症を引き起こすだけでなく、興奮、イライラ、意欲低下、記憶力低下などの精神面にも悪影響が表れます。また、認知症やうつ病になる可能性も。生きる目標を失って酒に溺れ、アルコールの影響でさらに生きる意欲を失う。これでは堂々巡りで救いがありません。
私が数年前に訪問介護にうかがっていた家庭は、高齢の母親と息子の2人暮らし。息子はアルコール依存症で家の中は荒れ果てていました。私の手を握り「毎日が地獄だ」と嘆き悲しむ母親の姿が目に焼きついています。アルコール依存症は家族をも不幸にします。




