
道で会えば立ち話をしたり、お土産を持っていったり、ときには1時間近く愚痴を聞かされたり。そんなご近所づきあいをしていると、自然に各家のプライベートな情報も入ってきます。でも、近くて遠いのがご近所だということを先日痛感しました。
3年前にご主人を亡くした高齢のご近所さんがいるのですが、私はつい数日前までひとり暮らしだと思っていました。ところが、実は30年近く引きこもっている息子が同居していたのです。
彼女の年齢から推測すると、息子は40代後半か50代になっているはず。ここに転居して20年近くになり、そのご近所さんともつかず離れずほどよい距離をとりながらつきあってきましたが、彼女は一言も息子の話をしませんでしたし、私も息子の存在にまったく気づきませんでした。知っているのは、昔からここに住んでいる高齢者世帯だけでしょう。今まで、近所の機密事項のように誰もが口を閉ざしてきたのです。
数年前まで若者の問題とされていた引きこもりですが、最近は30~40代に広がっているそうです。
島根県の調査では、引きこもりの53%が40歳以上の中高年層だったとか。このデータは、本人も親世代も高齢化が進んでいることを示しています。この調査では、支援の状況も報告していますが、「なんの支援も受けていない」という回答がダントツでした。
自分の寿命を考えては息子の将来について心を痛める、そんな毎日を送っているのではないかと、事実を知って以来、この母子のことが気になってなりません。世間に知られたくないという親の気持ちはわからないわけではありませんが、このまま放置していては、母と息子の将来が悲惨なことになるのは明らかです。社会福祉協議会に報告したほうがいいのでないか、民生委員に相談しようかと頭を悩ませていますが、これは「余計なお世話」なのでしょうか。
でも、「余計なお世話」こそ今の時代には必要なのかもしれません。




