
今、国は地域包括ケアシステムを推進しています。
簡単に言うと、医療や介護関係者だけでなく地域で働く多職種の人たちや地域住民、グループ、団体がネットワークを築いて地域ケアを充実させていくことで、高齢者が長年住み慣れた地域で継続的に生きていける環境を作っていこうというものです。
かつての日本には、地域に互助精神がありました。
でも、都市化が進むにつれて隣近所との関係は希薄になってしまっています。地域包括ケアシステムは、行政と地域が協働しながら地域コミュニティーの再生を図るというねらいも大きいと思います。
私は、地域コミュニティー再生を目的に地元で活動してきた経験から、一度崩壊してしまったものを再生させる困難さを実感しています。でも、少しは手ごたえも。顔見知りや立ち話ができる人が増えましたし、地域に親友ともいえる仲間もできました。
1人と1人の出会いが第一歩だと思うのですが、難しいのは相手との関係の築き方です。
かなり前のことですが、私はこんな失敗をしました。近所に1人住まいの高齢女性がいて、買い物もままならないほど体力的に弱っていたので、たまにおかずを差し入れていました。1人分増えても作る手間は同じですし、経済的負担もさほどありません。ところが、彼女は必ずお菓子などお返しを持って訪ねてくるのです。これには困りました。母に相談すると「差し入れは使い捨て容器じゃないとダメ」というアドバイスが。使い捨て容器は味気ないと思い、私は我が家の食器で差し入れしていたのですが、それがそもそもの間違いだったと気づきました。手ぶらでは食器を返しにくい。考えてみれば当たり前ですよね。
相手に気を遣わせないように気を遣う。人間関係を築くって大変ですね。でも、まずはそれを乗り越えて一歩を踏み出さないと、地域で安心して暮らせる老後はやってきません。




