
「臨床美術」をご存知でしょうか。
簡単に言うと、創作活動を通して右脳の働きを高め、ひいては前頭葉を活性化させるというもので、認知症の方の約70%に維持・改善が見られたというデータもあります。
アートセラピーと混同されやすいですが、相手を分析するアートセラピーと異なり、臨床美術は相手と同じ目線で共に創作活動を楽しみます。認知症の方を対象に始まった臨床美術ですが、現在では子ども、高齢者、一般成人、ビジネスマンなど多岐にわたる層を対象にしています。
臨床美術を行うのは臨床美術士です。
私は、3年ほど前に資格を取得し、本業のかたわら臨床美術士としても活動中。現在、地元の高齢者福祉センターで臨床美術講座の講師をしています。臨床美術という名称ではピンとこないので「アートで脳トレ」という講座名にしました。対象は60歳以上で、認知症の方もいらっしゃいます。
介護予防事業として開講している各種講座のひとつなのですが、最初の講座のときに区報で告知したところ、定員15名のところ30数名の応募があり驚きました。「絵を描くのは苦手」「絵なんて中学卒業以来やってない」という方は多いですが、多くの高齢者が創作意欲を持っているんだなと実感しました。「脳トレ」という言葉も利いたのかもしれませんね。
参加者の皆さんとともに創作活動をすることをセッションと言いますが、初めてのセッションのときは、みなさん創作に慣れていないので「私にできるかしら」と緊張気味。でも、実際にセッションを始めてみると、誰もがイキイキした顔になり夢中で取り組みます。そして、最後には「私にも絵が描けた!」と満足感・達成感を得ることができます。
しかも、その作品は世界でたったひとつのオリジナル。「これ額に入れて飾ります!」とか「すごくおもしろかった!」という参加者の声を聞くたび、私自身もうれしくなります。「美術に対して苦手意識が高い人でも楽しめる」のは、臨床美術の手法が通常の美術教育とはまったく異なるから。その秘密を知りたい方は、ぜひ体験してみてくださいね。




