
要介護認定の調査員をしている友人から聞いた話です。
息子さんとお母さまの二人暮らしのお宅に調査に伺うと、同席してくださった息子さんに感心することが多いそうです。
働いていてもきちんとお母さまの昼食の用意をして出かけたり、親御さんの体の調子を事細かに記録していて、こちらの質問によどみなく答えてくれたり、非常に細やか。「母に育ててくれた恩を返したい」と話していた息子さんもいて、自分が親の介護をするようになったら、こんなにきめ細やかに介護できるだろうか、と思ったとのこと。
私も同感です。
息子さんだけでなく、奥さまを介護しているご主人も熱心な方が多いそうです。
ご夫婦2人暮らしの、別の知人のご両親も、認知症のお母さまをお父さまが1人で介護していました。
知人が、何か手伝えることはないかと尋ねても、「(お母様には)今まで苦労を掛けてきたから、自分が面倒を見たい。子どもの手を借りるつもりはない」と言って、手出しをさせませんでした。現役時代は仕事人間で家事など一切したことがなかったお父さまが、様子を見に行った自分にまでみそ汁を作ってふるまってくれたと、目を丸くしていたこともありました。
愛情深い男性たちの介護は、とても熱心です。頭が下がりますが、ちょっと心配になることもあります。
お母さまや奥さまにより良い介護をしようと思うあまり、頑張りすぎてしまうのです。また、仕事社会で生活してきた男性たちは、時として手がけたことに対する「成果」を求めてしまいがちです。
しかし介護は、力を注いだからと言って、期待通りの成果が出るとは限りません。そのため、時として、成果が出ないことにいらだちを感じてしまうこともあるようです。
残念なことですが、家族による高齢者虐待の約40%を息子、約17%を夫と、男性が6割近くを占めているのは、成果を求めて頑張りすぎてしまうところにも何か原因があるのではないかと感じます。
ただ、男性は問題が起きた時に、解決策を講じていくのも早いもの。
最近は男性介護者が増えてきたこともあって、男同志で介護の悩みを語り合える場が増えてきました。
インターネットの検索サイトで「男性介護者の会」と入力すると、約120万件がヒットします。
親御さんの介護のために仕事を辞めた男性は、社会とのつながりを失い、相談相手どころか、話し相手すら失くしてしまうこともあります。
先も見えず、成果も感じられない介護だけに取り組んでいては、どうしても息が詰まります。周囲の人たちに上手に愚痴や弱音を吐いて、こころのバランスをとれる女性と比べて、男性には弱音を吐くのが苦手な人が多いようにも思います。
だからこそ、時には愚痴を言い、弱音を吐き、同時に新しい情報を得ることもできる「男性介護者の会」のような憩の場を見つけてほしい。
そして、70点ぐらいの頑張りすぎない介護を続けてほしいと思います。




