
友人のケアマネジャーに聞いた話です。
担当している男性Aさんは、昔の友人男性Bさんの家に居候しながら介護を受けています。
AさんがBさんの家に居候することになったのは、数か月前のこと。Bさんと数十年ぶりにバッタリ街で出会い、店で一緒に飲んで大いに盛り上がったAさんはそのまま一人暮らしのBさんの家に行き、さらに飲み続けたのだそうです。
二人とも眠り込んでしまい、Bさんが気付いた時、Aさんは異様な大いびきをかいていたとか。あまりに異様ないびきだったので不安になり、Bさんが救急車を呼んだところ、なんと脳卒中だったそうです。そのまま入院したAさんは、実は天涯孤独で世話をしてくれる家族や親せきが誰もいない人でした。Bさんは脳卒中で倒れた友人を放り出すわけにいかないと言って、医療費を負担し、退院後は家に連れて帰ったそうです。
右半身に麻痺が残ったAさんは言語障害もあり、一人では生活できない状態。数十年間まったく付き合いのなかったBさんが、Aさんの介護を担うことになりました。それから数か月。Bさんから手厚い介護を受けていたAさんですが、今、ターミナル期にあります。
長く家族に恵まれなかったものの、人生の終盤になって再会した友人に手厚い世話をしてもらっているAさん。「実はものすごく幸せな人なんじゃないか」と友人のケアマネジャーは言います。数か月前、街でバッタリBさんと出会わなかったら、Aさんはどうなっていたでしょうか。
実は私が知っている人にも、似たような境遇の人が2人います。聞くと涙が出るような非常に厳しい人生を送ってきたものの、最後は温かい人間関係、安心で穏やかな環境に恵まれた人たちです。
人生の帳尻は、どこかで合うようになっているのだろうか。
そんなふうに思ったりしています。




