
離れて暮らしている親御さんの生活に少しずつ困難が見えてきたとき。自分の自宅の近くに呼び寄せるか、あるいは遠距離介護に取り組むか、悩む方は多いと思います。
実際、「どちらがよいのでしょう?」という質問を受けることもしばしばあります。どちらがベターかと言えば、多くの介護関係者が呼び寄せることのデメリットの方が大きいと言います。
なぜデメリットが大きいのでしょうか。
これは、呼び寄せて転居させることで、親御さん自身が長年培ってきた習慣、人間関係、コミュニティを断ち切ってしまうから、そしてその影響がとても大きいからです。多少、できないことが増えてきていても、慣れ親しんだ家の中であればできる、周囲から助けてもらえれば何とかなる、見知った人に囲まれた地域であれば落ち着いて暮らせる、という方は多いものです。
特に軽い認知症の方など、新しいことを覚えたり、複雑な話を理解したり、判断を下したりするのは苦手ですが、長年習慣化されたことであればできることがたくさんあります。
しかし、知っている人は子どもの一家だけというまったく違う環境に連れていかれたら、親御さんは大いに戸惑います。それまでできていたことができなくなったとしても、不思議はありません。
年齢にかかわらず、例えば引越ししたあとや、転勤や異動があって新しい職場に移ったあとなど勝手がわからず、慣れるまでには意外にエネルギーを使いますよね。歳を重ねれば重ねるほど、新しい環境に慣れるには時間がかかります。エネルギーも使います。
親御さん自身が転居を希望されていなかった場合は、特に注意が必要です。新しい環境に慣れるための努力そのものがつらくなり、閉じこもってしまう方もいます。閉じこもりから、鬱や認知症につながっていくこともあります。
呼び寄せ介護を検討されている方は、こうしたリスクを十分考えて親御さんとよく相談してくださいね。




