鍵がない、財布がない、ということが多くなった。
予定を伝えたのに何度も確認してくる。
ガスの火を消し忘れることが増えた。
親御さんのそんな物忘れが気になるようになったとき、あなたならどうしますか。
「また失くしたの? 今週3回目だよ」
「さっきも言ったじゃない。何度聞くの」
「消し忘れないように気を付けてって言ったじゃない」
しっかりしてほしい。
ちゃんと覚えていてほしい。
親が物忘れをするようになるなんて認めたくない。
そんな思いから、叱ったり、誤りを正したり、予定を何度も復唱させたりしている方もいるかもしれません。
あなたから見て物忘れが気になるようになった親御さんは、親御さん自身もそのことにうっすらと気づいています。そして、物忘れをするようになったことを、少し不安に思い始めています。
そのときに、物忘れをしたことをとがめられ、しっかりして、忘れないで、と言われるとどう感じると思いますか。しっかりしなくてはと緊張し、それでも忘れると、少しずつ自信を失っていきます。忘れたら怒られると思い、忘れたことを隠したり、ごまかしたりするようになるかもしれません。
そうした不安や恐れがますます物忘れを、そして物忘れからくるパニックを拡大してしまうこともあるのです。叱って物忘れが改善することはほとんどありません。
物忘れが気になるようになったら、叱ったり、正したりするより、「大丈夫」と言ってフォローして差し上げてください。そして、できるだけ早く専門医を受診してください。今は認知症の進行を遅らせる薬がいろいろあります。
まずご家族が親御さんの物忘れを受け容れ、親御さん自身がご自分の状態を受け入れやすいようにサポートして差し上げてください。ご家族の対応次第で、認知症の進行、症状の現れ方には大きな違いが生じることがあるとわかっておいていただきたいのです。