介護をするときには、介護を受けている方の尊厳を尊重しよう、ということがよく言われます。
では尊厳の尊重とはいったいなんでしょうか。
その方がどういう暮らしを望んでいるのか。
この先の人生をどう生き抜きたいのか。
それをよく理解して、大切にすることが尊厳を尊重することかもしれません。
ご本人が望む暮らしを大切にする、と考えた時、周囲からは介護が必要だと思われていてもご本人が拒否している場合はどうすればいいでしょうか。生活環境も、栄養状態もよくないまま暮らし続けることを望む高齢者は、意外にも少なくありません。
ご家族は、介護サービスを利用しないまま、状態が悪化していく親御さんを見ていられないと思われることが多いと思います。ケアマネジャーなどの専門職がそういう状態を把握したら介護サービスの利用を勧めるべきだ、という声もあります。一方で、本人が望まない介護サービスを無理強いするべきではないのでは、という意見もあります。
さて、はたしてどちらが尊厳を大切にしているのでしょうか。
見守るのか、介入するのかの線引きは、ご本人の生命維持に危機が生じるか否かで判断すべきだという意見があります。確かにそれは的を射ているように思います。ただ、生命の危機を感じて介入する際にも、介入する側はご本人の意思に反したことをしようとしていると意識しておくことが必要ではないでしょうか。
それは、いかに親御さんを大切に思っておられるご家族にも言えること。どこかで、親御さんの意志に反することをしていると意識しておくことが大切なように思います。そうすれば、その後の親御さんの言動に受け入れがたいものがあったとしても、「意に反したことをしているのだから仕方がない」と受け止められるのではないかと思います。
どう暮らし、どう生き抜くのかはご本人次第。尊厳を尊重するのであれば、介護にかかわる側には、基本、そんな気持ちが必要なのかもしれません。