少しずつ春の訪れを感じる今日この頃ですが、今年は新型コロナウイルスの拡大で落ち着かない春となってしまっています。慌てずに、まずは「睡眠、食事、手洗い」の基本を守って、体調を整えながら過ごしましょう。
もうひとつ、この季節は花粉症も気になります。眼がしょぼしょぼ、悩ましい春です。 今回は眼にまつわる病気、白内障を患われたご利用者様のお話をご紹介させていただきます。
白内障は、眼の中のレンズの役割をする水晶体が濁ってしまう病気です。加齢に伴って発症する場合が最も一般的で、早ければ40歳から発症し、80歳を超えるとほとんどの人が白内障の症状を引き起こしているといわれています。 白内障は徐々に進むことが多いため、視力低下に気がつかないまま、知らず知らずのうちに日常生活が変化し、いつの間にか悪化してしまうということがしばしば起こります。ことに認知症の方となると、ご自身の症状をお伝えになることが難しい為、周囲の人による気づきが大切です。
お一人暮らしの松蔵さん(83歳)は認知症があります。日頃ヘルパーの訪問やデイサービスをご利用になりながらご自宅生活を続けていらっしゃいます。明るく社交的で、お喋り好きな松蔵さんはいつもデイサービスへのお出掛けを楽しみにされています。
春先のある日、松蔵さんがしきりに両眼をこすっていらっしゃいました。具合をお尋ねすると「なんだか眼がしょぼしょぼするんだよ」とのご返答。時節柄、花粉症かな?と思われましがその後、だんだんとご様子に変化が生じ始めます。それまでしっかりとした足どりで歩かれていた松蔵さんでしたが、歩行の際にちょっとした段差につまずく姿がしばしば見られるようになりました。また、天気の良い日にもお部屋のカーテンを閉め切り、薄暗い室内でお過ごしになることが多くなり、遂には外に出ることを拒まれ、楽しみにされていたデイサービスに行くことも頑なに嫌がられるようになりました。一見したところ、認知症の進行による閉じこもりにも似た状況でしたが、ご本人によくよくお聴きすると「外が真っ白で、眩しくてこわいんだ…」と教えてくださいました。
早速、眼科へとお連れしたところ、「両眼白内障。手術が必要」とのご診断。この白内障の手術、手術自体は短時間で終わり日帰りで行えるものなのですが、術前は1週間前から1日4回の点眼が必要。また、術後もしばらくの間は1日6回の点眼が必要となります。更に当分の間、終日「保護メガネ」をかけていなければならず、眼に触れることも顔を洗うことも禁止されます。こうした指示を松蔵さんがお一人で守ることはできません。
そこで、白内障の手術を行う為の介護サービス利用計画を立てました。術前1週間、毎日朝昼夕の点眼はデイサービスで、就寝前の点眼はヘルパーが訪問してお手伝い。手術当日はケアマネジャーがお付き添いをし、術後はそのまま施設にお連れしてお泊りサービスをご利用。施設に宿泊していただき毎日6回の点眼と、術後の衛生管理を行う、という計画です。
松蔵さんにご納得をいただいた上、この計画のもと白内障の手術は行われ、無事成功。みごと視力を回復され「みんなべっぴんに見えるな!」と、松蔵さんのご機嫌も回復。見えづらいことで億劫になられていた外出も再開され、その後デイサービスにも元気に通われるようになりました。
松蔵さんのように転びやすくなったり、閉じこもりになるなどのご様子が見られましたら、もしかしたら「眼の病気」が隠れているかもしれません。お心当たりの際には、いちど眼の検査をなさってみてはいかがでしょうか。認知症のある方、お一人暮らしの方でも介護サービスを組み合わせることで、白内障の手術を受けることは不可能ではありません。お困りの折には、身近な医療、介護の専門職にまずはご相談なさってみてください。