18改正で利用者の生活どう変わる?―ケアマネ学会でシンポ

この春の介護保険制度改正で、利用者の生活はどう変わるのか―。日本ケアマネジメント学会の第17回研究大会では、同学会の白澤政和理事長(桜美林大大学院教授)を座長に、今回の“トリプル改定”をテーマにしたシンポジウムが開かれた。白熱した議論をリポートする。

当日は、全国老人福祉施設協議会の瀬戸雅嗣理事(社会福祉法人栄和会事務局長兼総合施設長)、北海道医師会の藤原秀俊副会長(医療法人秀友会理事長)、NPO法人「十勝障がい者総合相談支援センター」の門屋充郎センター長、同学会の白木裕子副理事長(株式会社フジケア社長)の4人がシンポジストとして登壇した。


シンポジウムの総合討論の模様(19日、北星学園大)

特養CMが在宅プラン、「包括ケアの試金石」

瀬戸氏は、制度改正の内容を話し合う社会保障審議会の分科会で委員を務める。居宅介護支援事業所の管理者が主任ケアマネジャーに限定されたことについて、瀬戸氏は「分科会の中で最後まで反対した」と主張し、その理由として厚生労働省の推計を挙げた。

同省は、全国の事業所に必要最低限の主任ケアマネを配置する場合、2020年度に充足する見通しを示している。瀬戸氏は「21年度から義務化されることになっている。本当にこれでいいのか。厚労省に検証するように言った」と振り返った。

今回の介護報酬改定では、特別養護老人ホーム特養)の入所者が外泊した際、特養が提供する在宅サービスに対する報酬が新設された。算定には、特養ケアマネが在宅サービスの計画を立てる必要がある。瀬戸氏は、「施設のケアマネが在宅のケアプランを立てる。これは将来、地域包括ケア特養が果たさなければならない役割の一つの試金石になると感じている」と述べた。また、「特養が『終の棲家』だとはどこにも書いていない。在宅復帰を含め、積極的にやることが必要だと思う」とも語った。

■「専門用語ではなく、医師に分かる言葉で」

医療の立場から発言した藤原氏は、末期がんの患者に対する主治医ケアマネの連携を強化する内容が盛り込まれた点を評価するとともに、医療保険介護保険リハビリの連携などを進めるため、双方で使用可能な計画書の共通様式が新設されたことについては、「医療介護連携の一つのモデルになると思う」と述べた。一方、介護療養病床の廃止をめぐる議論の末に生まれた介護医療院については、「はしごを外されることが前提では話は進まない」とし、厚労省側をけん制した。

藤原氏はまた、「ケアマネに『先生方に連絡しても来てくれない』とよく言われる。『来ない』と決めつけて、初めから『参加しない』にチェックが付いていることもある。連携は顔が見えないとできない。連携するのであれば、相手のことも少し考えてほしい。そうすれば喜んで行く」と話す一方、「われわれが学んでいない言葉もある。ケアマネや福祉系の方も専門用語ではなくて、僕らが分かる言葉でお願いしたい」と求めた。

■主任CMの人材育成、生活支援に寄与

福岡県北九州市で介護施設などを運営する白木氏は、4月に完全実施となった新たな地域支援事業について、「行政だけでなく、ケアマネが地域の福祉をどう担っていくかが、今回突き付けられた大きな課題だと思う」と指摘した。

地域の“つながり”の希薄化、高齢者の孤独死や引きこもり、共働きの増加…。地域の活動の担い手が減少する現状がある一方、白木氏は「市区町村による介護保険の利用抑制の働きというものがみられることも事実だ」とし、「介護を卒業された方々がどこで、どのように生活を継続するのかも大きな課題になると思う。地域の制度をどうつくっていくのか。ケアマネの専門性、価値、そして倫理観、そういったものが、これからますます求められていくと思う」と述べた。

今回の改定では、特定事業所加算の算定要件として、他法人が運営する居宅介護支援事業者と共同の事例検討会を開くことが新たに加わった。白木氏は、「主任ケアマネが、地域のケアマネの人材育成をどのようにしていくのか。それがひいては、利用者の生活支援に大きく寄与すると考えている」と語った。

■65歳になったから「お願い」ではだめ

今回の制度改正に伴い、介護保険サービスと障害福祉サービスの両方に「共生型」が新たに加わり、それぞれのサービス事業所の指定を受けるための基準が緩和された。現行の制度では、65歳以上になると介護保険サービスが優先される。日本の超高齢化が進む中、65歳を迎える障がい者の数も増えており、サービスの切り替えなどにスムーズに対応することが狙いだ。

十勝で障がい者の相談支援業務を行っている門屋氏は、「65歳になったから、『はい、お願いします』というのは、絶対にやってはいけない」と強調し、障害福祉サービスの相談支援専門員とケアマネが連携しながら、障がい者との信頼関係の構築を緩やかに進める必要性を示した。また、「ぜひ相談支援専門員の資格をお取りいただきたい」とも述べ、相談支援専門員とケアマネの両方の資格を持つ“ダブルマネジメント”の体制を整備することも併せて提案した。

一方、白木氏はケアマネの立場から、「障がいをお持ちで生活している方は、介護保険への移行を“問題”と捉えているというのが私の認識だ。障がい者の方々の生きづらさや暮らしぶりを、ケアマネが(制度の)枠の中にはめてしまうのではないかと、大きな不安を持っている」と指摘した。その上で、相談支援専門員とケアマネが一緒に学ぶ機会を設ける必要性を示し、「一人の方の事例を通して、お互いの考えていることを出し合うことで、シームレスな支援が可能だと思っている」と述べた。

■生活守る、CMの資質向上がスタート

司会を務めた白澤氏は、「今回の報酬改定は、利用者にとって大変厳しい改定だったと思う。例えば、『連携』という言葉の中身を私たちが明らかにし、利用者の生活をきちんと守っていく。そういったことが求められている。ケアマネジャーの資質を向上させることが、われわれにとってのスタートではないか」と述べ、シンポジウムを締めくくった。


シンポジウムの座長を務めた白澤氏

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