老年医学、そして在宅医療のバイブルともいうべき本が日本医事新報社から2月に刊行された。
在宅医療の基盤をなす重要領域として「家庭医療学」「老年医学」「緩和医療学」の3領域を取り上げ,これらの領域の知見を統合する形で在宅医療のエッセンスが結集されている。
折しも、今回の診療報酬改定では、在宅医療への推進が顕著に反映されており、プライマリケアの重要性、住み慣れた家で最期まで暮らすためには、医療が地域に出ることが必須と謳われている。本書はまさにその実践のために必須の内容が詰まっている。
編著者は、千葉県松戸市で長年在宅医療に心血を注いでいる「あおぞら診療所」の川越正平医師。
川越氏は、1991年東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院で最先端医療に従事していたが、どんなに最高の医療をほどこしても救えない命があることに対峙。その後一転して、1999年医師3名によるグループ診療の形態であおぞら診療所を開設した。2004年にあおぞら診療所院長に就任。現在、2012年医療法人財団千葉健愛会理事長、東京医科歯科大学臨床教授、東京大学高齢社会総合研究機構客員研究員。在宅医療の分野でも、日本在宅医学会理事(大会運営委員会委員長)、日本在宅医療学会評議員、日本プライマリ・ケア連合学会代議員、日本緩和医療学会代議員、全国在宅療養支援診療所連絡会全国世話人などを務める。
ケアマネジメントオンラインでは、現在、川越先生によるケアマネジメントスキルアップ講座
Vol.5「医療との連携のために事前に必要なこと」、 Vol.6「医療と連携する上で必要なこと」
を配信中。
目次
<1>家庭医療学・在宅医療総論
1.高齢多死社会と在宅医療、2.訪問診療の実際とその意義、3.全身状態のアセスメント、4.在宅医療の導入、5.治療・ケアのシンプル化、6.包括的なケア、7.継続的なケア、8.患者中心の医療の方法、9.患者・医師関係の深まり、10.家族志向型ケア、11.意思決定支援、12.多職種協働(IPW)、13.訪問看護の実際とその意義、14.訪問薬剤管理指導の実際とその意義、15.ケアマネジメントの実際とその意義、16.歯科医師が果たす役割、17.地区医師会が果たす役割、18.市町村行政が果たす役割、19.在宅医療を支える地域資源、20.地域包括ケア
<2>老年医学
1.高齢者総合機能評価(CGA)、2.Polypharmacy、3.認知症の診断害、10.リハビリテーション栄養、11.生活期リハビリテーション、12.運動器不安定症、13.転倒・骨折、14.褥瘡、15.医療介護関連肺炎、16.慢性心不全、17.慢性呼吸不全、18.慢性腎臓病(CKD)、19.非がん疾患の軌道学、20.東洋医学
<3>緩和医療学
1.痛み、2.鎮痛補助薬、3.オピオイドスイッチングや次の一手、4.緩和医療におけるインターベンション、5.呼吸器症状(呼吸困難・咳・胸水)、6.消化器症状(呕気嘔吐・消化管閉塞・腹水)、7.食欲不振と終末期における輸液、8.倦怠感、9.精神症状(抑うつ・不安,せん妄)、10.スピリチュアルケア、11.コミュニケーション、12.がんの軌道学、13.生命予後の予測、14.ひとが死にゆく自然経過、15.在宅コンフォートセット、16.ホスピストライアングル、17.終末期高齢者への医療ケア、18.認知症の方の緩和ケア、19.小児患者の緩和ケア、20.死亡診断
<4>在宅医療各論・制度
1.各種カテーテル管理、2.経管栄養管理、3.中心静脈栄養管理、4.人工呼吸管理、5.悪性腫瘍患者指導管理、6.持続皮下輸液、7.在宅で可能な検査、8.パーキンソン病、9.筋萎縮性側索硬化症(ALS)、10.精神疾患、11.居住系施設における在宅医療、12.小児在宅医療、13.病院と地域の連携:退院支援、14.病院と地域の連携:後方支援機能、15.診診連携、16.介護保険における医師の役割、17.患者の社会背景を理解する、18.在宅医療の診療報酬制度、19.ICTを用いた情報共有、20.虐待
<5>Q&A
■書名:在宅医療バイブル――家庭医療学、老年医学、緩和医療学の3領域からアプローチする
■編著者:川越正平
■発行:日本医事新報社
■価格:7,140円
■体裁:B5版・626ページ
◎日本医事新報社
http://www.jmedj.co.jp/