岡山大学は、12月6日、日本人高齢者の気質についての研究結果を発表した。
研究は、岡山大学大学院疫学・衛生学分野他の共同研究グループ5人(葛西洋介院生、鈴木越治助教、岩瀬敏秀助教<地域医療人材育成講座>、土居弘幸教授、高尾総司講師)によるもので、日本人高齢者におけるType D気質の心理的・身体的健康影響について検証した。
Type D気質とは、negative affectivity(否定的な感情や視点、考えを抱きやすい傾向)とsocial inhibition(他者からの否認や非難などを恐れるため、否定的な感情を表現できない傾向)をあわせ持った気質。
先行研究によると、Type D気質は心血管疾患やメタボリックシンドロームなどの身体疾患、うつ病やPTSDといった精神疾患にかかりやすいという結果も出ている。
今回の研究の結果、日本人高齢者では男女ともに、Type D気質があると、心理的な苦痛を4倍以上感じやすく、自分が不健康だと2倍以上に感じやすくなることが示唆された。特に75歳以上に比べて65~74歳の方がよりその傾向が強く、定年退職直後の人などで注意する必要があると考えられるという。
日本の高齢者においてType D気質と呼ばれる性格・気質を調査したのは初めて。また、世界でも一般人高齢者を対象にした初の研究であり、研究成果は2013年10月17日、米国のオンライン科学雑誌『PLoS ONE』に掲載された。
【研究の概要】
■研究の時期:2010年8月
■研究の対象:岡山県内の3市町に居住する65歳以上の全人口を対象に調査票を郵送し、回収された13,929名を分析。
■研究の方法:自記式の調査票を用いた。
■研究結果のポイント
Type D気質を有する割合は46.3%と先行研究に比べて高いことがわかった。年齢やアルコール、喫煙、肥満、教育歴、社会経済的地位、同居人数を統計学的に調整し解析した結果、Type D気質を有する男女ともに心理的苦痛を感じるリスクは4~5倍、自分で不健康だと感じるリスクが2倍高いことが示された。
特に注目すべき点として、65~74歳の人達が、75歳以上の人達に比べてよりリスクが高くなることが示唆された。さらに、65-74歳ではType D気質を有する場合、気分障害などの精神的疾患に関する重篤な心理的苦痛へのリスクは9.92倍(調整後)と著しく高くなり、より注意が必要ということが示唆された。
■見込まれる成果
性格や気質と呼ばれるものは、その人の考え方や行動に影響し、個人の健康に影響を及ぼす。高齢者を予防的にサポートをしていく上で、どのような人達のリスクが高いかを知ることは有用であり、同研究成果をさらに発展させることは、効果的な社会的サポートの提供を検討する上で重要と考えられる。
◎岡山大学
http://www.okayama-u.ac.jp/