介護の専門家に相談できる

＜認知症の人と家族の会＞認知症カフェについての調査結果を公表

公益社団法人認知症の人と家族の会は、「認知症カフェのあり方と運営に関する調査研究事業報告書」を公表した。

「認知症カフェ」は、認知症の人と家族、地域住民、専門職の誰もが参加できる場で、昨年、厚生労働省が策定した「オレンジプラン（認知症施策推進5カ年計画）」でも、認知症カフェの普及・推進が言及されている。
しかし、認知症カフェの実施内容や運営形態はさまざまで、どこまでを認知症カフェと呼ぶべきかという基準もない。

調査は、各地で取り組まれている認知症カフェ（28カ所）を対象に、その実態や効果、課題を明らかにすることを目的に実施した。その結果、以下のようなことがわかったという。

■認知症カフェの概要――調査結果の分析から
・設立の母体や運営は約半数が社会福祉法人とNPO 法人で、民間の活動によるものだった。

・活動場所はさまざまだが、民家を改装したり、施設の一部の場合も地域の人が気軽にアクセスできる場であった。

・開始時期は2012年を境に急激に増加している。

・支援スタッフの半数は、ボランティアや民生委員、家族会、認知症サポーターといった専門職以外の人達であった。

・利用者は平均すると、本人、家族、支援者が1に対し、市民は2の割合だった。

・認知症の重症度や年齢など本人の利用に条件を設けているところが約半数存在した。

・年間運営費は、50万円未満のところと200万円以上のところの大きく2つの群に分かれていた。

・内容としてすべてのところが飲み物と茶菓を提供していた。また、実費として飲食費を利用者が負担していた。

■認知症カフェの5タイプ（開設の動機や目的で類型化）
・認知症の人と家族が集う場の発展型（8カ所）
もともと家族会など認知症の人や家族向けの集いを行ってきた背景を持ち、立ち上げた人は、認知症の家族を介護した経験がある場合がほとんど。調査対象で唯一運営目的に「認知症の人の思いを社会に発信する場」をあげている。

本人を含む家族の支援の優先度が高く、カフェを開く場は、個人的な資金でリフォームした自宅の提供や、自治体の施設の利用などさまざま。介護の経験に基づき、認知症の人と家族の支えになりたいという思いが開設を可能とする助成金の獲得やモデル事業の採用につながっているケースもあった。

・認知症または高齢者の専門施設発展型（6カ所）
カフェ運営の動機や目的は、若年認知症の人の居場所づくりと理解へのきっかけとなる場をつくることで、認知症初期の人とその家族の支援や相談の場としての優先度が高い。
特別養護老人ホームでコミュニティ・カフェを開設していた実績のある法人が、新たに地域の中でカフェを開いた例や、認知症に限定せずに地域住民を参加者として受け入れる例、普段からさまざまなコミュニティ・カフェとして使用している場を週1日程度認知症カフェとして利用している例もある。

このタイプは、医療・介護専門職や福祉専門職がボランティアとして運営している場や、社会福祉協議会の職員が中心になっている場など、医療・介護・福祉とのつながりを持ち、日常的な場で相談支援の機能を果たす点に特色がある。

・自治体のモデル事業型（3カ所）
自治体レベルの施設や公共事業、認知症対応型カフェの委託などを受け、開設へとつながった。横のつながりを求める地域住民のニーズを実現する形で、自治体の助成金や施設が活用されている。
認知症初期の人への支援を目的にしているケースもあれば、誰もが利用できる地域のつどい場として運営しているケースもある。

・地域住民が集う場の発展型（7カ所）
地域住民の横のつながりを形成することを目指し、誰もが利用できるコミュニティ・カフェとしての目的を優先。「地域の縁側」「まちの居場所」などの呼称で親しまれている。
毎日開いている場も多く「いつでも誰でも」気軽に利用できる機能が強い。認知症の人だけではなく、「地域の人々がお互いの関わり合いの中から活力を見いだせる場」であることに特色がある。

・既存形態にとらわれない個人の実践発展型（4か所）
自らの介護の経験を生かしたり、地域のニーズを解決するために開設した背景を持ち、運営者の熱意が活動を支えている。認知症をはじめ介護保険制度のサービスに合わない人々が、安心して過ごすことができる場となっている。

本人と家族、医療・介護専門職、一般住民などさまざまな立場の人が利用客やボランティアとして出入りし、立場を超えた出会いの場としても機能。地域住民や専門職のボランティアが育成される場ともなっている。こうしたつどい場は週1回以上の頻度で開かれており、いつでも気軽に相談でき、行政へとつなげてもらえる地域のサポーター・メッセンジャーとしての役割も担っている。

レポートでは、認知症カフェの効果や、認知症ケアにおける認知症カフェの意味、今後の課題についての考察なども読むことができる。

◎認知症の人と家族の会
http://www.alzheimer.or.jp/

◎認知症カフェのあり方と運営に関する調査研究事業報告書
http://www.alzheimer.or.jp/pdf/cafe-web.pdf