<セミナーレポ>友人の後見人となり看取った体験からわかったこと

市民福祉情報オフィス・ハスカップが主催する、ハスカップ・セミナー2013 No.1「最期まで在宅は可能か~、在宅ケアの可能性」が、ノンフィクションライターの中澤まゆみさんを講師として、5月22日(水)に開催された。

■独居高齢者の行く道を暗示
参加者は30名ほどで、介護現場で働く若い世代から実際に親を介護している年配者と幅広い層が集まった。講師の中澤さんはこれまでに医療介護福祉分野をテーマにした著書を数多く手がけ、この3月には『おひとりさまでも最期まで在宅』(築地書館)を出版したばかり。今回は、同書を書くきっかけのひとつとなった友人丸子さんの介護の話を切り口に、在宅介護の可能性についてのポイントが語られた。

友人の丸子さんは、中澤さんより15歳年上の現在78歳、一人暮らし(おひとりさま)で身寄りがないという境遇。10年ほど前から物忘れが目立つようになり、2006年に初期のアルツハイマー病と診断された。その時に医師から「任意後見制度」の利用を勧められ、中澤さんは看取りまでを引き受ける後見人となり、在宅での近距離介護が始まった。

■よい医師、よいケアマネとの出会いで望みを実現
しかし、2008年にタコつぼ型心筋症で入院すると、退院後にうつ状態が始まり、拒食状態に陥ったため、医師からは「在宅は無理」という宣告を受ける。それでも、本人が施設を嫌がるため、頼りになるケアマネさんの存在と、認知症かかりつけ医を見つけるなどして、何とか自宅での一人暮らしを強行。かかりつけ医のおかげで拒食も治まっていった。2010年には、デイ拒否、散歩拒否、外出拒否が続き「廃用症候群」が心配されたため、何とか運動をさせようと訪問リハビリを開始。依頼したのがたまたま在宅療養診療所だったことから、健康管理のために医師の訪問診療も開始した。この時から、かかりつけ認知症専門医への通院と、在宅医療の2本立てが始まり、24時間365日いつでも駆けつけてくれる医療体制が確立された。これは本人だけでなく、介護者にとっても仕事の時間を確保する好条件となった。

その後、2012年に骨折で自宅での生活が困難になり、見守り入院のために有料ショートステイを利用したところ、集団生活への拒否がなくなっていたことがわかる。相前後して、自宅売却という事情が持ち上がり、今年の1月からは庭付きの一軒家という自宅の環境に近いグループホームに入所。現在は、認知症かかりつけ医の通院、ホームでの訪問診療、近所の外科医(骨折と痔の治療)への通院の3本立ての医療体制を組み、安定した生活を送っているという。

■制度への理解と「自分力」を身につけよ
現在、日本の看取りの状況は、自宅が2割、病院が8割で、60年前とは逆転してしまった。とはいえ、千葉県の意識調査では、6割の人が「自宅で死にたい」と思いつつも、「家族に負担がかかる」などの理由で半数以上が「その実現はむずかしい」と諦め気味だ。それでも、自分の看取りについて約4割が「訪問診療の医師や看護師がいればも可能」、家族の看取りについて約6割が「医療介護のサポートがあれば可能」だとも答えている。実際、ある調査(※)によると、在宅療養患者が在宅を選択した理由のトップに「必要な在宅医療介護サービスが確保できたため」が4割という高い割合を占めていた。ほかに、「家族等の介護者が確保できたため」「本人、家族等が強く希望するため」が挙がっていて、まさに、この3項目が「“在宅復帰”実現のポイント」だと、中澤さんは強調する。
※在宅療養を行う患者について医療機関が確認したデータ「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」

今後、団塊の世代が75歳を迎える2025年には3人に1人が高齢者となり、多死時代、大介護時代、おひとりさまの増加、老老介護の増加、家族の介護力の低下により、かなりの数の看取り難民が出ることが予想される(厚生労働省試算、2030年に47万人)。これまでは市民が智恵を出し合って、医療介護の連携を図り、在宅での看取りを模索してきたが、超高齢化に伴う医療費削減などの必要性から、国までもが「病院から在宅へ」と方針を転換し、地域包括ケアなどを打ち出してきた。

しかし、丸子さんの例からもわかるように、「最期まで在宅」ができる場合とできない場合がある。また、在宅ケアでは住み慣れた家で自分らしく療養できるものの、条件が整わないと難しく家族の負担が大きいし、病院では医療ケアが可能だが管理される、療養費用がかかる、一定期間で退院・転院が必要になる。一方、介護保健施設や有料老人ホームでは24時間の介護があるが、医療ケアが十分ではない、費用負担がかかるなど、いずれも一長一短がある。「それらを状況によって選択できることが、自分らしく生きることにつながるのではないでしょうか」と中澤さんは実感を持って語った。そして、そのためには「しっかり制度について勉強し、“自分力”をつけていくことが必要」だとも。

最期まで在宅」の大きなポイントは、以下の3つ。
1)本人仕様の「在宅支援チーム」をどう作っていけるか。
例:病院、在宅主治医、訪問歯科医、訪問看護師、訪問薬剤師、ケアマネジャー介護ヘルパー、訪問リハビリ(理学療養士、作業療法士
2)ボランティアや友人を含めた、「支援ネットワーク」をどう作っていけるか。
例:年末年始の預かり、車を出す・遊び・食事・買い物など外出の援助
3)本人の「家にいたい」という意思。

これに対して会場からは、近所でお茶を飲む人もいない現実があり、「支援ネットワーク」を作るのはなかなかむずかしいという声が上がった。確かに、そうした友だちネットワークは簡単ではなさそうだ。そんな場合、「地域には在宅医療、在宅での看取りを考えるグループなどがあるので、まずは思いのある人とつながってみてはどうか」と提案がされた。また、「身内を特別養護老人ホームに入所させたものの、問題行動からすぐに退所させられた。受け入れ先の精神病院では身体拘束があり、このまま入院させておきたくない。自宅に帰れるようにするにはどうしたらいいのか」という悲痛な悩みを打ち明ける家族には、まずは行政窓口で“在宅療養支援診療所”を紹介してもらうことだとアドバイスがされた。

とはいえ、24時間対応であるはずの在宅療養支援診療所が、必ずしも対応できていない現実があり、在宅での看取りはまだまだ問題山積だ。その中で制度を活用していくためには、前出のように“自分力”をつけ、ネットワークを作り、智恵を出し合っていくといった草の根的な動きの積み重ねが必要といえそうだ。

◎市民福祉情報オフィスハスカップ
http://haskap.net/

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