厚生労働省は、5月15日、第44回社会保障審議会介護保険部会を開催した。
この日の回と次回の同部会では、地域包括ケアシステムの構築、介護保険制度の持続可能性の確保にむけて、これまでの議論、4月22日の社会保障制度改革国民会議で提示された議論の整理(医療・介護分野)の記載内容をふまえて、網羅的な意見交換を行うこととし、この日は、以下の項目について各委員から意見が挙がった。
(1)市町村での体制整備・保険者機能関係
・地域包括支援センター
・地域ケア会議
・在宅医療・介護の連携の推進
・生活支援・介護予防
・介護保険事業計画
・「見える化」の推進
(2)制度関係
・第1号被保険者の保険料
・利用者負担
・補足給付(低所得者の食費・居住費の負担軽減)
・介護納付金の総報酬割
なかでも、意見が集中したのが、「生活支援・介護予防」の部分だ。これについては、社会保障制度改革国民会議で、「軽度の高齢者は、見守り・配食等の生活支援が中心であり、要支援者の介護給付範囲を適正化すべき。具体的には、保険給付から地域包括ケア計画と一体となった事業に移行し、ボランティア、NPOなどを活用し柔軟・効率的に実施すべき」と指摘されていた。また、新聞各紙でも、「『要支援』の分離検討」といった見出しが躍っていた。
これに対し、委員からは、「効果を検証すべき」という声が多く挙がった。
UAゼンセン日本介護クラフトユニオン顧問・政策主幹の河原四良委員は、“働く者の立場から”と前置きし、「給付範囲の適正化について話す前に、提供しているサービスが自立支援になっているのか、検証する必要がある。自立支援につながっていないサービスがあれば、思い切って介護保険から外すべき。利用者からも働く側からも納得を得るには、財源からの議論ではなく、『自立』に寄与しているかという観点で議論をすべき」と主張。一般的にはホームヘルパーに対して家政婦というイメージがいまだに拭えない現状を鑑み、“自立支援につながっているサービス”を精査することで、働く側にとっても納得感を得られるのではないかと指摘した。
日本看護協会常任理事の齊藤訓子委員も、「効果についてもう少しデータが出ないと、判断がつかないのではないか?」と指摘。
日本介護福祉士会名誉会長の田中雅子委員は、社会保障制度改革国民会議の指摘に対し、「生活支援が中心であれば、自立に効果がないと言いたいのか?」と疑問を呈し、「これまでに予防給付に対して、介護予防サービス計画がつくられ、すでにデータが集まっているはず。当事者がどうなったのか、示すべき。一律に、予防給付が財源を圧迫しているという議論は納得いかない」と意見した。
また、民間介護事業推進委員会代表委員の山本敏幸委員は、2011年に行った、生協の介護予防訪問介護サービスに関する調査結果を紹介し、37%が「利用者がヘルパーと共に実施」、18%が「ヘルパー単独で実施し、利用者は別の作業を実施」と回答していること、さらに、90%の利用者が「心身状態が維持・改善した」と回答していることを明らかにした。こうした結果に対し、山本委員は、「介護予防の効果があることがアンケートからもわかる。生活リハビリという視点で行われており、悪化を防げている。効果があるサービスは(介護保険に)残すべき」と主張した。
――社保審レポ(2)へ続く
◎厚生労働省
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