<孤独死対策(1)>社会的に孤立しやすい高齢者とは?――総務省調査

総務省は4月、「高齢者の社会的孤立の防止対策等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」を公表した。

高齢者の社会的孤立の防止対策と災害時の保護を推進する観点から、国庫補助などによる関係対策の実施状況や支援が必要な高齢者の実態把握の状況、災害時の高齢者の避難支援の取り組み状況などを調査し、必要な改善措置について勧告することを目的としたもの。
同調査から、高齢者の社会的孤立の状況や対策を中心に紹介する。

■超高齢化社会が進展し、社会福祉サービスを利用する高齢者が増加
平成23年現在、65歳以上の高齢者人口はの総人口に占める割合が23.3%と、超高齢社会に突入した日本。世帯構成で見ると、65歳以上の高齢者のいる世帯は1,942万世帯で全体の41.6%。このうち、高齢者単身世帯の数は470万世帯、高齢夫婦世帯は460万世帯となっている。今後高齢化率は上昇を続け、高齢者単身世帯・高齢夫婦世帯も増加が見込まれている。
高齢社会の進展に伴い、社会福祉サービスを利用する者も増加し、介護保険サービスの利用者数は、平成12年の149万人から23年は417万人に。 また、生活保護を受給している高齢者世帯も年々増加し、平成12年度の34万1,000世帯から23年度には63万6,000世帯となり、受給世帯全体の42.5%を占めている。

■孤立死とは、生存中の孤立状態が死によって表面化したもの
一人暮らしの高齢者が、死後かなりの期間を経過して発見される事例が報道されるようになったのは昭和50年代後半。その後、阪神・淡路大震災後の仮設住宅での誰にも看取られない高齢者の死や首都圏の団地での孤独死の発生などで、高齢者の孤立死への社会的関心は高まっている。
『平成22年版高齢社会白書』では、死後長期間放置されるような孤立死は、人間の尊厳を損なうものであり、また、身内や周囲の人に心理的衝撃や経済的負担を与えることから、孤立死を「生存中の孤立状態が死によって表面化したもの」として捉え、生きている間の孤立状態への対応を迫る問題として受け止めることが必要であるとしている。

■社会的孤立に陥りやすい高齢者の特徴
『平成22年版高齢社会白書』では、社会的孤立に陥りやすい高齢者の特徴として、単身世帯、暮らし向きが苦しい、健康状態がよくないなどをあげている。さらに、高齢者の社会的孤立の背景には、高齢者単身世帯や高齢夫婦世帯の増加といった世帯構成など経済・社会の変化が関係し、社会的孤立のリスクはますます高まっているとしている。
また、同白書では、高齢者の社会的孤立が生み出す問題について、生きがいの低下、孤立死の増加、消費者契約のトラブルの発生などをあげている。

高齢社会対策基本法第6条に基づき定められている「高齢社会対策大綱」(平成24年9月7日閣議決定)では、社会的に支援を必要とする人々に対し、社会とのつながりを失わせないような取り組みを推進していく必要性を指摘。一人暮らしの高齢者等が住み慣れた地域で孤立することなく安心した生活を営むことができるよう、民生委員ボランティア、民間事業者などと行政が連携し高齢者の社会的孤立を防止することを定めている。

高齢者の社会的孤立を防止する対策
高齢者に対する福祉介護等のサービスは、生活保護制度や介護保険制度によるもののほか、社会福祉法に基づき市区町村が主体となって実施する地域福祉活動がある。国は、各種の地域福祉活動を支援するために以下のような補助事業を実施している。

1.安心生活創造事業
安心生活創造事業は、介護保険サービスの対象外でも高齢者が地域で安心して暮らすことができるよう、孤立死などを予防するための見守りや買物支援など定期的な支援事業で、国が費用の一部を補助する。 平成21年度から23年度まで全国58市区町村でモデル事業として実施し、平成24年度以降も引き続いて実施する。

2.24時間対応の定期巡回・随時対応サービス事業など

介護保険法等の一部を改正する法律」(平成24年4月1日施行)では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の創設などが盛り込まれ、医療介護・予防・住まい・生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」の実現に向けた取り組みの推進が定められた。
これに先行する取り組みとして、厚労省では、24 時間対応の定期巡回・随時対応サービス事業、地域包括支援センター等機能強化事業、日常生活自立支援事業などを実施してきた。
このうち、「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス事業 」は、平成23年度に全国52の地方公共団体にてモデル事業として実施。平成24年度から介護保険制度に定期巡回、随時対応型訪問介護看護が導入されたことで終了した。

地域包括支援センター等機能強化事業
市区町村が実施主体のモデル事業で、地域包括支援センターなどのコーディネート機能の強化や、地域課題に対応した問題解決の仕組みづくりを行い、国がその費用の一部を補助する。同事業は2年限りのモデル事業だが、厚生労働省は平成24年度以降、生活困難な課題を抱える高齢者の個別のケア方針について検討する「地域ケア会議」を推進することで、多職種連携やインフォーマルサービスを活用した見守り支援など多様な機関による包括的支援を強化するとしている。

・日常生活自立支援事業
社会福祉法第81条の規定に基づき、認知症高齢者など判断能力が不十分な者に対し、地域において自立した生活を送れるよう支援する事業で、国がその費用の一部を補助する。同事業の実施主体は、都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会で、市区町村社会福祉協議会に委託して実施するケースもある。

援助内容は、日常生活上の消費契約や住民票の届出など行政手続きに関するもので、具体的には、預金の払戻しなど日常の金銭管理や生活変化を察知のするための定期的な訪問。
事業を担当する専門員は、生活支援員の手配や支援内容の指示などを行なう。厚生労働省は、専門員1人当たりの契約件数について、ケアマネジャーなどの制度を参考に、良質な支援を提供する観点から35件と設定している。

なお、厚生労働省は、平成23年3月の社会・援護局関係主管課長会議において、「事業の普及が不十分だと消費者被害や経済的虐待が増加し、高齢者や障害者が地域で安心した生活を継続していく上で大きな壁になり、権利擁護の観点からも大きな問題になる」とし、都道府県・指定都市に対し、事業の充実を図るための財源措置などについて積極的な対応を求めている。

◎総務省
http://www.soumu.go.jp/

高齢者の社会的孤立の防止対策等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告
http://www.soumu.go.jp/main_content/000217313.pdf

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・孤立死の防止対策について都道府県などに通知−−厚労省・国土交通省

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