<緩和ケアの誤解>緩和ケア病棟も高額療養費制度の対象に――老年学公開講座レポ(2)

東京都健康長寿医療センターは、2月7日、第126回老年学公開講座「あなたに合った人生のしめくくりを」を開催した。講座の後半と質疑応答について紹介する。

第三部は、東京都健康長寿医療センター緩和ケア内科医長の荒井和子氏による「〝緩和ケア〟を知り、より自分らしい人生を歩みましょう」。

まず、緩和ケアの定義とは「病気になった人のつらさをやわらげる医療ケアで、病気の種類や経過は問わず、病気の始まりから終わりまでに提供するもの」と述べ、緩和ケア科と他の診療科との違いとして、緩和ケアでは、画像検査や採血ではわからないつらさを対象とすることが説明された。

また、緩和ケア医療行為にとどまらず、心のつらさや、病気で仕事ができないなど社会生活に関わるつらさ、家族のつらさなども対象にし、医師だけではなく、専門の看護師、薬剤師、理学療法士栄養士医療ソーシャルワーカーが関わることが説明され、「本人や家族がどのように生きていたいかという、主体性を尊重するのが緩和ケア緩和ケアを通し、人生を豊かにすることが目的です」と述べ、緩和ケアの生かし方として、次の3つを紹介した。

1)自分のつらさを相手に伝える
つらさや痛みはその人の感じ方で違うので、医療者にきちんと伝えることが大事。WHOでは、「痛みに対応しない医師は倫理的に許されない」と公言している。また、痛みをとるのに用いられる医療用麻薬は「中毒になるのでは」「末期に使うもの」と思われがちだが、医師の指導のもとに使えば中毒になるのは0.2%以下で、末期だけに使用するものではなく、使用したからと寿命が短くなることはない。

2)自分の病気について正しい情報をもつ
緩和ケアでは患者の主体性を大切にする。患者が主体性をもつためには、できるだけ正しい情報をもち、医療者にまかせきりにしないことが必要。
医療者の説明がわかりにくい、インターネットの間違った情報を信じ込んでいるなど、正しい情報を得るのがむずかしくなっています。おまかせの医療にならないために、医療者も患者も互いに歩み寄ってコミュニケーションをとることが求められます」

3)これから先のことについて家族や医療者と話し合う
病気のことだけではなく、これからの人生でどのような生活をしたいかを家族で話し合い、それをもとにどのような医療を受けたいのか医療者に伝える。
「このように、医療者と患者・家族とが共同作業を行なうことで、患者の主体性が発揮され、本人と家族の満足度が高くなることが欧米の研究で判明しています」。東京都健康長寿医療センターでは、そのための支援として「アドバンス・ケア・プランニング」という取り組みを進めていくという。

緩和ケアは入院だけではなく、外来や在宅でも受けられること、緩和ケア医療費は、現在日本ではがんの場合のみ加算が算定されていることなどの説明もなされた。

講演後は質疑応答のコーナーが設けられ、3人の演者が回答した。その一部を紹介する。

Q 緩和ケア医療費について
荒井氏「緩和ケア病棟に入院した場合は定額制で、入院日数で3段階にわかれており、すべて高額療養費制度の対象になっている。また、緩和ケア病棟は差額ベッドの対象で、半分は有料、半分は無料のベッドになっている。無料ベッドが先に埋まってしまうため、入院当初は差額ベッドに入ってもらい、無料のベッドが空いたら移るというように対応している病院が多い」。

Q かかりつけ医と家庭医の違いは?
平山氏「かかりつけ医は、患者がこの先生をかかりつけ医主治医と思えばどの医師でも構わない。『この先生なら信頼できる』という医師を見つけておくといい。家庭医は専門のトレーニングを受け、地域全体を見る医師のこと」

Q 緩和ケアとホスピスの違いは? 
荒井氏「ホスピスが日本に生まれた当初、最後を看取る場所として作られたが、その後、積極的に苦痛や症状をとっていくという考えのもと、緩和ケアができた。ホスピスと緩和ケア病棟に厳密な区別はないが、緩和ケア病棟は看取りのための病棟だけではない。現在もホスピスという名前を出している施設は、宗教的なバックボーンをもつところが多い。また、緩和ケアという名称でも、医学的なものに傾いているのか、人を看取るケアに重点をおいているのか病院によって異なるので、それぞれの特徴を認識した上で利用するのがいい」

Q 身内の認知症が進行し、胃ろうが必要になるかもと医師に言われている。どのように考えるといいか
平山氏「完全に周囲を認識できない状態ではなく、認知症があるなりに周りのことがわかり、人との触れ合いが楽しめるのであれば、延命治療ではないと考える。自分の両親の場合で考えると、胃ろうをつくり、もう少し人生を楽しんでもらいたい、と思う」
島田氏「もし老人ホームにいるのなら、胃ろうをつけたらどういう生活になるかをホームの職員にも考えてもらい、本人が元気だった頃の生活と照らし合わせて判断するのがいいと思う」
荒井氏「認知症だから胃ろうはしないなど、通り一遍に考えるものではない。家族や医療者とよく話し合って決めてほしい」

東京都健康長寿医療センター http://www.tmghig.jp/

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