厚生労働省は9月12日、2回目となる「介護保険サービスに関する関係団体懇親会」を9月12日に開催した。
この会は、社会保険審議会介護給付費分科会など、通常開催されている会議のメンバーになっていない事業者団体などの代表が一同に集い、意見交換を行ったり厚労省への要望を述べる場として設けられた。
今回は15団体15人が出席(一部、社保審介護給付費分科会委員と重複)し、忌憚のない意見を述べた。その後、8月10日に開催された第78回社保審に提出された「介護給付費分科会における議論について」の主な論点について話し合った。
今回は、施設系団体の代表が、口をそろえて医師配置の柔軟性について訴えたほか、リハビリ、24時間ケア、在宅での看取りなどが主なキーワードとしてあがった。
全国老人保健施設協会の山田和彦氏は、在宅復帰を前提とする老健の実態に見合った在宅復帰率を評価してほしいと要望。またリハビリについては週2回以上の機能訓練は利は専門職が提供すべき」として、リハビリ専門職100:3体制の創設を訴えた。
24時間在宅ケア研究会の時田純氏は、「24時間在宅ケアが在宅介護の限界点を引き上げる」と、その必要性を強調。しかし施設ケアと居宅サービスを比較し、在宅介護でも必要な人には施設サービス同様の切れ目のないサービスを提供するべきと訴えた。
時田氏は、施設では見守りに始まり、トイレ解除、服薬対応、行為、食事介助、口腔ケアなど必要なケアが何回でも受けられる(最多1日120回という人も)としたうえで、重度になるほど施設指向が強くなるのは、「必要即応の24時間サービスだから」と述べ、「地域包括ケアの構築は、24時間定期巡回訪問介護と看護が決め手」だとした。
全国社会福祉施設経営者協議会の廣江研氏は、特別養護老人ホームの医師配置について触れ、「特養での医療は、外付けもあっていい」と提言。
これについては、全国個室ユニット型施設推進協議会の諸隈正剛氏も「配置医師が休日や夜間の診療をしていない施設が95%もあり、万一のときに死亡診断書が書けない」と個人医の診察を認めるよう訴えた。
医師の配置については、全国有料老人ホーム協会の和田四郎氏も、「有料老人ホームにおいて、医師配置のない施設での服薬率が高い(7種類以上の薬を飲む入居者が36%)ことを示し、さまざまな形態がある有料老人ホームにおいても、医師配置が重要であることを示した。
一方、日本慢性期医療協会の武久洋三氏は、2025年の医療介護体制シミュレーションを示しながら、「2025年には全対象患者757万人のうち90%が慢性期医療の受け持ち」と述べた。また、医療現場や施設から在宅へという国の方針については、「在宅で看取るということは、レントゲンも撮らず聴診器1本で肺炎と診断し、十分な治療もしないで看取ること。何の画像診断もせず近代治療を施さずに在宅死させたいと希望する人が急増するとは日本では考えにくい」と、「在宅への看取り」に対して一石を投じた。
全国老人福祉施設協議会の桝田和平氏は、「地域区分の見直しについて、収支の悪い地域の見直しを図ることで、報酬そのものが下がる地域が出てくるのでは」と懸念を述べた。また介護職員の処遇改善交付金について触れ、「交付金を報酬として組み入れていいのか、交付金のままなのか、結論を出してほしい」と延べると、ほかの出席者からも「看護師や栄養士など、ほかの現場職員も処遇改善に組み入れてほしい」と要望があった。
また、特養のユニットケアについては「従来型特養にユニット型の併設を認めてほしい」と要望。「そうすることでショートステイの相互利用を可能にするなどしないと、男女別の部屋を用意しておかなければならないなど柔軟性を欠く」と現状の苦しさを訴えた。
日本福祉用具供給協会の山下一平氏は、福祉用具の個別支援計画書の導入について触れ、ぜひ介護保険の一連の流れのなかに福祉用具のモニタリングを盛り込んでほしいと要望した。また、商品価格に対してレンタル料金が業者によってバラつきがあることについては、「レンタルは(メンテナンスなど)サービスの部分も大きい」としながらも、極端にレンタル料が高い、いわゆる「はずれ値」については、「摘発は難しいが、(業者名を)公表するなどチェックをお願いしたい」と要望した。
全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会の川原秀夫氏は、「(地域包括ケアシステムが導入されると)夜間の人材確保が難しくなる。また、サービスの質の評価は市町村に権限があるが、その市町村の担当職員の質も担保しなければ」と、評価する側の質を問うた。
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