加齢に伴って筋力や認知機能などが低下し、要介護手前の状態となるフレイル(虚弱)の対策を検討するため、厚生労働省は、職能団体の代表者らによる有識者会議を設置する方針を固めた。フレイル対策には、運動や口腔ケア、栄養指導など、複数のアプローチが必要となるが、現在、医療保険と介護保険とで取り組みの実施主体が異なる。同省では来月にも初会合を開き、両制度を横断した施策の実現に向けた論点を整理した上で、年内に具体策をまとめる見通しだ。
現行制度では、主に生活習慣病の予防は医療保険の保険者、認知症などの介護予防は介護保険の保険者である市町村が担っている。また医療保険の場合、75歳を境に後期高齢者医療制度へ移行し、保険者が都道府県ごとの「広域連合」に変わるため、事業の実施主体もばらばらだ。
こうした背景から、政府が6月に閣議決定した「骨太の方針2018」では、「高齢者の通いの場を中心とした介護予防・フレイル対策や生活習慣病等の疾病予防・重症化予防、就労・社会参加支援を都道府県等と連携しつつ市町村が一体的に実施する仕組みを検討する」ことが明記された。
■「通いの場」にフレイルチェックなどの機能も
市町村では現在、総合事業の一環として、一般の高齢者が介護予防を行う「通いの場」を整備している。厚労省によると、2016年度時点で全国に7万6492カ所あり、「体操・運動教室」を開く自治体が全体の半数近くを占めるが、同年度の高齢者人口に占める参加者の実人数の割合(参加率)は4.2%にとどまっている。
同省側は、現行の「通いの場」に、フレイルのチェックや保健指導などを行える機能を追加することを想定している。市町村の保健師や栄養士らとも連携し、専門職の定期訪問も実現したい考えだ。同省では、26日の社会保障審議会介護保険部会で有識者会議の設置を提案し、正式決定する方針。