「ケアマネジメントを有料化」「介護の自己負担は原則2割」―。23日、介護保険制度に大きな変革を迫る意見書を、財務省の審議会が麻生太郎財務相に提出した。意見書では、遅くとも団塊の世代が75歳以上となる2025年までには、国債の発行などに頼らずに必要な支出をまかなえる「プライマリーバランス黒字」(PB黒字)を安定的に実現すべきと指摘。その実現に向け、介護や医療などで取り組むべき社会保障費の抑制策を具体的に示している。
財務省の審議会が提出した意見書は「新たな財政健全化等に関する建議」。
■生活援助が多いケアプランの点検に「指針策定を」
意見書では、PB黒字化に向け、予定通り19年10月に消費税率の10%への引き上げを行うことに加え、社会保障費を始めとした歳出改革の徹底が必要とした。ただし、毎年の社会保障費の抑制に関する具体的な目標額は明記せず、「目安を定めることが必要」とするにとどめた。
介護に関しては、主に次の施策の実施を求めている。
・ケアマネジメントの質の向上を図る観点から、居宅介護支援に利用者負担を設ける。
・今年10月から、各自治体は生活援助中心型の訪問介護が基準回数以上に位置付けられたケアプランの点検が求められる。この制度導入に向け、ケアプランチェックのための指針などを早急に策定・周知する。
・介護保険サービスの利用者負担を原則2割とする。
・要支援者に対する総合事業のサービスについては、基本的に緩和型や住民主体のサービスに移行するなどの方針を国が定める。
・要介護1や要介護2の人を対象とした生活援助サービスなどについて、地域支援事業への移行を進める。
・現在は基本サービス費に含まれている介護老人保健施設や介護療養病床などの多床室の室料相当額を、基本サービス費から外す。
・訪問介護やデイサービスを始めとした居宅サービスにおいて、サービスの供給量を自治体がコントロールできる仕組みを導入する。
・経営の安定化などの観点から、介護サービスの経営主体の統合・再編などを促すための施策を講じる。
・6年後に廃止となる介護療養病床と医療療養病床(25対1)については、▽患者の状態像にそぐわずに単価の⾼い医療療養病床へ転換することを防ぐ▽多床室の室料負担の⾒直しを確実に実施するとともに、転換が進まない場合の介護療養病床などの報酬⽔準の引き下げを検討する▽サービス付き⾼齢者住宅など、⾼齢者住まいへの転換も含めた幅広いダウンサイジングの⽅針を策定する―などの政策を着実に進める。
・今年度から自治体に交付される新たな交付金について、指標の達成状況の「見える化」を行う。また、自立支援や重度化防止に効果を上げた自治体の取り組みを分析し、全国展開を図る。さらに21年度からは国の調整交付金を自治体の取り組みへのインセンティブとして活用することを進める。
■地域別の診療報酬設定も提言
医療関連では、全国一律となっている現行の診療報酬を改め、地域別の報酬を設定することが提言された。都道府県による医療費抑制の取り組みを進めることが狙い。また、「かかりつけ薬局」以外を受診した場合の定額負担を導入することなども盛り込まれた。