日本慢性期医療協会の武久洋三会長は17日、財務省が財政制度等審議会の分科会で公表した医療・介護などの改革案に対する見解を示した。武久会長は、一定の自己負担増は必要としながらも、改革案の多くが自己負担増に偏っている点を問題視。「寝たきりの人を減らし、医療介護費用を大幅に削減できるような根本的な見直しが必要」とした。また、財務省の改革案にケアマネジメントの有料化が含まれている点については、その導入が、将来的な要介護者の状態悪化を招き、かえって財政を圧迫する可能性もあるとし、反対する姿勢を示した。
財務省が4月11日と25日の財政制度等審議会の分科会で示した社会保障の改革案には、▽介護保険サービスの自己負担を2割とする▽75歳以上の高齢者が医療サービスを受ける際の窓口負担を2割にする▽ケアマネジメントの有料化▽都道府県ごとに診療報酬を設定-などが盛り込まれている。
■財務省の提案「負担増ばかりが目立つ」
この改革案について、武久会長は「負担増ばかりが目立つ内容」と言及。過剰な負担増は、サービスの利用抑制につながり、結果として患者や要介護者の増加を招くと指摘した。その上で、負担増によって財源を確保する施策より、寝たきりの人を大きく減らし、医療や介護の費用を大幅に削減するという発想に基づき、制度や政策を根本的に見直すべきとし、次の施策の実現を改めて提案した。
・リハビリができない急性期病院での入院期間の大幅な短縮
・急性期病院で初期治療が終わった患者は、すぐにリハビリの充実した地域多機能型病院に転院させる
(記者会見する武久会長)
また、「慢性期病院での社会的入院の削減」や「特定除外制度の経過措置の撤廃」も必要とした。
さらに武久会長は、ケアマネジメントが有料化されれば、ケアマネジャーを通さすにケアプランを作る人が増えると指摘。要介護者を抱える家族の中には、自立支援より、サービスに必要な費用を減らすことや介護保険内で利用できるサービスを確保することを重視する例も多いとする趣旨の意見を述べた上で、「やはりケアマネジメントは有料化しない方がいい」とした。それでも有料化導入に踏み切れば、在宅の要介護者の状態を悪化させ、国が負担する介護給付費を増やすことにつながりかねないと警鐘を鳴らした。