暗闇に一晩中、目をこらした排泄ケア――聴講レポ2

10月9日、「ハカルことで分かる尊厳ある排泄ケア」をテーマにしたシンポジウムの第2講演では、主催者の社会福祉法人こうほうえん施設長・田中とも江氏が登壇した。
長年、看護師として身体拘束抑止やおむつはずしに尽力してきた田中氏は、尊厳あるケアには大変でも本人の生活リズムに合わせた排泄ケアが不可欠という信念から、各地でおむつはずしを提唱する講演を行っている。
今回も、自らが「遠慮なくズケズケと言う」と称した力強い口調で、安易なおむつ使用が高齢者の尊厳を損なっていることを訴え、終始、100名の聴衆を引きつけた。

田中氏は、施設の高齢者が安眠できないのは尿が膀胱に溜まることと関連があるのではないかと仮説を立て、排泄パターンを把握するために、こうほうえん6施設において“排泄委員”による夜間尿量の定時測定を行ったことから報告した。

「入所者の眠りを妨げないよう配慮しつつ、暗闇に10〜12時間も目をこらし、発声や寝返りなど細やかな動きを観察するのは集中力や持続力が必要で、大変なことだった」と率直に語った田中氏は、協力したスタッフの労をねぎらった。

観察の結果、入所者の発声ひとつとっても、うなり声、独り言、「あっ」と瞬間的な声をあげるなど十人十色で、体の動きも寝返りをうつほかにピクッとした動き、手を握っているなど、一人ひとり違う細かなサインを記録した。

2009年に実施した調査では、「ノム・ダス・ハカル(飲む出す測る)」の調査票をもとに、プローブ(測定器)を体に当てるだけで残尿を測定できる装置“ゆりりん”を活用して42人の夜間尿量を定時測定した。その結果、夜間膀胱内の尿量に関連して眠りが浅くなっていることが明らかになった。

田中氏は「20時の就寝で23時〜夜中1時頃に蓄尿量は500ミリリットル以上とピークに達していた。これではとても眠れたものではない。夜寝かせないと昼間眠ってしまうというスタッフの思い込みから、画一的に20時にベッドにつかせるのはいかがなものか」と、スタッフ都合による介助を見直すよう求めた。

また、調査対象は要介護4〜5など重度の人が30人近く占めたが、田中氏は「重度だからといってあきらめない。排泄時間を予測した個別のトイレ誘導などに取り組んだ結果、おむつはずしが可能となった例もある。寝たきりや認知症の人こそ、尊厳が守られた快適な暮らしをしてほしいとの想いで取り組んでいる」と、重度者であっても個別の排泄ケア介入の必要性を訴えた。

田中氏は、決して楽ではない排泄ケアの個別対応への取り組みを通じて、「リハビリパンツも尿とりパッドも、体に装着して尿便の漏れを受け止める用具すべてが“おむつ”。また安易なおむつ使用や、適切な排泄支援をしなかったために起こる失禁は“介護性失禁”であり、介護する側に要因があると受け止めるべき」と、介護者としての定義を説いた。

聴講者らは、時折、田中氏の厳しい意見に息をのむ表情を浮かべることもあったが、実践にもとづいた主張と、何よりも高齢者が快適に過ごすことを目指して、うまくいかないことがあっても決してあきらめない田中氏の姿勢に、会場は大きな拍手を送っていた。

■取材協力
社会福祉法人こうほうえん
NPOシルバー総合研究所

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