厚生労働省は12日、「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」(座長=鳥羽研二・国立長寿医療研究センター理事長)の初会合を開いた。客観的に効果が裏付けられた「科学的介護」の実現に向け、収集すべき具体的なエビデンス(サービスの効果を示す証拠)を検討することを目的としている。初会合では、エビデンスを収集するテーマとして「ケアマネジャーによるアセスメント」や「ケアマネジメント」「認知症」などが示された。
(科学的裏付けに基づく介護に係る検討会、12日、厚労省内)
介護保険のサービスの効果については、誰もがわかる客観的な情報として示せていないことが課題とされている。こうした状況を踏まえ、塩崎恭久・前厚労相は今年4月14日、政府の未来投資会議に対し、介護サービスについて世界に類のないデータベースを構築した上で、科学的に自立支援などの効果が裏付けられたサービスを国民に提示する方針を示した。
今回の検討会は、その方針に従って開催された。科学的介護の実現を目指し、従来からある要介護認定情報や日常生活動作、認知機能に加え、新たに収集すべきエビデンスの具体的な内容を検討・確定することを目的とする。検討会では年度末までに、新たなエビデンスをどのような形で、どのくらい収集するかなどを中間とりまとめとして公表する方針だ。
■検討会の中間とりまとめ、18年度改定には直接影響しないが…
なお、塩崎前厚労相が未来投資会議に示した資料では、「18年度の介護報酬改定から、自立支援に向けたインセンティブを検討」するとしているが、同検討会の中間とりまとめの内容が、18年度の介護報酬改定に直接影響することはない。ただし、この取り組みによって自立支援の効果が期待できるサービスが示されれば、そのサービスは、将来的に報酬上で優遇される可能性は高い。そのため、ケアマネジャーや介護事業者にとって、この検討会の中間とりまとめで示される内容は、今後のサービスのあり方を考える上で重要なポイントとなる。
初会合では、リハビリによって軽度の認知症の人の生活機能が改善した場合に算定できる介護老人保健施設の「短期集中リハビリテーション実施加算」など、既に介護でエビデンスとして活用されている事例を報告。さらに今後、エビデンスを収集すべきテーマとして、次の5項目を示した。
「栄養」
「リハビリテーション」
「(主としてケアマネによる)アセスメント」
「ケアマネジメント」
「認知症など」
次回以降、同検討会では上記のテーマにかかわるエビデンスのうち、科学的介護の実現に特に重要と思われるエビデンスを選ぶための検討を開始する。
この日の議論では、構成員から、介護が個人の生活に密着したサービスである以上、医療などとは異なる独自のエビデンスを蓄積する必要があるとする意見が続出。また、介護事業所や在宅介護の現場では、十分な計測機器などがないと予想されることから、簡易に得られるデータをエビデンスとすべきとする意見も出た。