内閣府はこのほど、「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」(検討会)に報告書案を示した。介護職員の得意な分野を「見える化」することや、高齢者が介護分野で活躍できるよう自治体が一括研修を行うなどの内容が盛り込まれている。同案への大きな異論はなく、報告書は年内にも取りまとめられる見通し。今後、政府は、検討会の報告書をたたき台とし、高齢社会における各種の取り組みの新指針の策定に乗り出す。新指針は年度内をめどに策定される見込みだ。
国は、高齢社会における各種の取り組みの指針として「高齢社会対策大綱」を定めている。2012年9月に閣議決定された現行の大綱には、経済や社会の変化を踏まえ、5年をめどに見直しを行うことが盛り込まれていた。そのため内閣府は今年6月、検討会を設置し、大綱の見直しを見据えた検討を進めてきた。
今回示された報告書案では、基本的な考え方として、「すべての年代の人々が希望に応じて意欲・能力を活かして活躍できるエイジレス社会を目指す」や「地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る」などを提示。
さらに、高齢者の活躍の支障となる問題を解決するため、医療・介護サービスのあり方や、介護離職ゼロの実現に向けた取り組みも提案した。
このうち、介護離職ゼロの実現については、まず、介護労働者の数の確保が必要とした。具体的には、介護職の処遇を適正な水準に保つことや、高齢者が介護分野の人材として活躍できるよう、自治体が一括研修を行ったりすることが必要としている。
また、介護労働者の専門性を高めることや、家族介護者への支援も重要と指摘。介護労働者の専門性を高める取り組みとして、介護の業務を「リハビリ援助」や「認知症高齢者対応」など、より細かなレベルまで区分けした上で、各職員がどの分野を得意とするかを「見える化」する案を示した。この取り組みによって、利用者の納得感の向上や、職員と利用者の適正なマッチングが期待できるという。
医療・介護サービスのあり方については、医療機関中心のサービスから地域包括ケアシステムへ移行することを基本とすることを改めて提案。また、介護職が介護施設や医療機関など、働く場によって異なる制度的支援を受けている現状については「留意すべき」とした。