国立循環器病研究センターは、4月4日、アルツハイマー病を発症する「アミロイドβ(Aβ)」の脳血管への蓄積を抑制する物質を突き止めたと発表した。
研究所再生医療部の齊藤聡流動研究員と病院脳神経内科の猪原匡史部長らの研究チームによる。
アルツハイマー病は、Aβの脳血管への蓄積(脳アミロイド血管症)が一因であることが明らかになっている。しかし、これまでのアルツハイマー病研究は神経細胞の病態研究が中心で、脳アミロイド血管症に焦点を当てた治療開発研究は十分になされていなかった。
今回、研究チームは、Aβが蓄積してできる「Aβオリゴマー(毒性をもつ立体構造)」が初期の脳アミロイド血管症の主因であると仮定し、アミロイド凝集抑制作用を有する物質「タキシフォリン」を脳アミロイド血管症モデルマウス(認知症モデルマウス)に投与して、タキシフォリン非投与のモデルマウスおよび正常マウスと比較した。その結果、タキシフォリン投与群で脳内のAβオリゴマー量は大幅に減少し、脳血流量や認知機能も正常に近い状態まで回復することが明らかになった。
さらに、マウスの脳内の状況と認知機能障害の程度について、タキシフォリンを投与した認知症モデルマウスとタキシフォリン非投与のモデルマウスおよび正常マウスとを比較した。その結果、脳内で重積して毒性を呈するAβオリゴマーの量はタキシフォリン投与群が非投与群の1/4程度にまで減少していた。また、記憶の中枢である海馬へのAβ沈着量も、投与群は非投与群の半分程度だった。また、投与群の脳血流量はほぼ正常マウスと同等まで回復し、空間記憶能テストでも変わらない結果であった。
これらの結果から、タキシフォリンがアルツハイマー病の有効な治療薬候補となると考えられるとし、研究チームは今後は、認知症新規治療薬としてヒトへの効果を確認するため、2017年度中の治験開始と2025年中の臨床応用を目指すという。
◎国立循環器病センター プレスリリース
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/20170404_press.html