東京医科大学病院は、10月22日、COPD(慢性閉塞肺疾患) 治療の追跡調査結果を発表し、病期にかかわらずCOPDの治療の介入が重要との見解を示した。
COPDは肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれ、タバコなどによる炎症で肺の働きが低下する疾患。代表的な症状は咳、痰、息切れなどで、患者の約70%が日常生活において何らかの制限を受けており、さまざまな合併症を引き起こす原因にもなる。
東京医科大学病院呼吸器内科では、国立国際医療研究センター病院・東京警察病院ほか2病院と共同で、COPD治療を受けていない50歳以上の、中等症から重症患者49名を対象に、1年間にわたりガイドラインに従った治療を行い、その効果を追跡調査した。
COPDには、空気を胸いっぱいに吸い込み、それをすべて吐き出させ、その数値を見る肺機能検査が用いられる。この一気に吐き出す量(努力性肺活量)の最初の1秒間に吐き出した量を「一秒量」といい、努力性肺活量に対するこの一秒量の割合(一秒率)が70%以上の場合を正常という。
中等症から重症のCOPD 未治療患者に対し、ガイドラインに沿った治療を行うことで、「一秒量」の経年低下を抑制するだけでなく、CATスコア(COPDの状態が健康と日常生活にどのような影響を与えているかを調べるためのテスト)に関して、咳、痰、息切れなどが統計学的有意差をもって改善した。さらに、身体機能の改善もみられた。
以上から、COPDの病期にかかわらず、未治療のCOPD患者でもガイドラインに沿った治療を行うことで、健常日本人の「一秒量」の経年低下に近づけることが可能であることがわかった。
現在、日本のCOPDの潜在的患者数は530万人以上で、90%以上が未診断と言われるなか、COPDによる死亡は年間約16,000人で増加傾向にあり、死亡原因の9位、男性では7位に位置している。COPDに費やされる医療費も増え続け、その年間総医療費は推計8,055億円と言われている。
COPD有病率は、喫煙者と喫煙経験のある人の方が非喫煙者よりも高く、高齢者になるほど高くなる傾向があり、70歳以上の有病率は17.4%と推測されていることから、高齢者の健康や医療費抑制においても示唆を含む調査結果と言えそうだ。
◎東京医科大学 ニュースリリース
http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/news/release/20151022.html