厚生労働省は8月30日、第30回社会保障審議会介護保険部会を開催し、「認知症者への支援のあり方」「要介護認定について」「ケアマネジャーのあり方」の3点について議論を行った。このうち、まず「認知症者への支援のあり方」「要介護認定について」に関する議論から紹介する。
2009年4月の要介護認定の見直しによって認知症患者をはじめ、要介護区分が低く判定されるケースが増加したことを受けて、要介護認定を見直すべき、あるいは廃止すべきではないか、との意見が出ていた。
この日の会合で意見が集中したのは、以下にまつわること。
・要介護認定は必要か?
・区分支給限度基準額の上限を上げる、あるいは撤廃すべきか?
・認知症者の支援体制は適切か?
要介護認定の必要、不必要に関しては、委員によって意見が分かれた。
議論の口火を切った、勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)は、要介護認定を廃止するよう、提言。理由として、昨年4月のシステム変更後、認定が認知症に適応していないことを実感していると説明した。
また、最も意見が多かったのが、要介護認定は必要だが簡素化すべき、という意見。
桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険委員会委員長)の代理で出席した本永氏は、現行の7段階の認定ではなく、3段階を提案。「要介護2と1の客観的判断が難しい」「要介護4と5では、介護の手間にさほど差がないとの指摘もある」と理由を述べた上で、「3区分にすることでコンピューターによる一次判定で比較的、合致するようになり、(認定に関する事務手続きが)軽減される」と指摘した。
河原四良委員(UIゼンセン同盟日本介護クラフトユニオン会長)も、働く側の意見として、認定結果に対する不信があること、ケアプランを作成するにあたって認定区分別ではなく、個人の実状に合わせて考えるべきとの意見があることなどを説明。その上で、「7区分は複雑で、現実的には3区分程度がベター」とした。
川合秀治委員(全国老人保健施設協会会長)も、「事務手続きの簡素化は必要だが、要介護認定はあるべき」と主張。「認定システムは残して、物差しを変えたらどうだろうか」と提案した。
一方で、現行の7区分をそのまま残すべきとの意見も挙がった。
藤原忠彦委員(全国町村会長(長野県川上村長))は、「全国一律の仕組みですでに現場に定着しているので、簡素化すると逆に混乱するのでは?」と指摘。さらに、要支援・要介護区分を下げることを目標にリハビリテーションに励んでいる人たちにとっては、区分が減り1区分下げることのハードルが高くなれば、やる気がそがれるのではないかと訴えた。
土居丈朗委員(慶応義塾大学経済学部教授)も、「過剰に複雑であることは良くないが、過度な簡素化も警戒すべき」と見直しに慎重な姿勢を見せた。
また、井部俊子委員(日本看護協会副会長)からは、「一般の介護認定と認知症の介護認定で、異なる物差しを作ることを考えてもよいのでは?」と、提案があった。
区分支給限度基準額の上限、認知症者の支援体制に関する議論はレポート2で、ケアマネジャーのあり方についてはレポート3で紹介する。