2020年の国内の高齢者向け食品市場は、2014年と比べて28.1%増の1,693億円となることが、6月12日、富士経済の調べで明らかになった。
簡便性ニーズが高まる高齢者向け食品8品目について調査した。品目別にみると、市場規模が最も大きいのは流動食で、病院・高齢者福祉施設向けが9割弱を占める。ただし、近年の価格競争の激化や、2014年の胃ろう造設術の診療報酬の引き下げが影響し、伸びは鈍化すると予測される。
やわらか食については、在宅用が薬局・薬店での店頭販売を増やしており、認知度が向上。今後は、在宅における要介護高齢者の増加に伴って、さらなる市場拡大が見込まれる。施設用についても、調理スタッフの不足が深刻化するなか調理の手間削減につながることから、冷凍のムース食やゼリー食を中心に導入施設が増加しつつあるようだ。
とろみ調整食品・固形化補助剤は在宅向けが伸びているが、これまで比較的要介護度の低い入居者が多かった施設においても、入居者の高齢化により利用が増加している。
食品宅配サービス市場は、2014年から115.0%増え、2020年には7,178億円となる見込み。
宅配サービスは、生協の利用者が増加しているほか、施設では人件費などのコスト削減を目的に、完成食の宅配を採用するところが増えており、市場拡大が続いている。
病院給食と高齢者福祉施設給食をあわせた施設給食市場は、2014年とほぼ横ばいの1兆0,833億円。
病院給食は、病院・診療所の施設数減少により苦戦が続くが、高齢者福祉施設給食は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の増加によって市場拡大が続く。特に有料老人ホームでは、高単価なメニューの提供など、給食の価格帯も広がっている。
ただ有料老人ホームは、施設数が増加する一方、小規模化しており、コスト面から配食サービスを選択する施設も増えるとみられる。
2015年度の介護保険制度の改正により、介護サービス提供施設のコスト削減意識は一層高まってきている。また在宅介護強化の流れもあり、高齢者向け食品や宅配サービスなどにもその影響が現れてきそうだ。
この調査結果は、『高齢者向け食品市場の将来展望2015』にまとめられている。