順天堂大学の長田貴宏助教らのグループは、脳が損傷を受けた際に示す記憶障害の程度を予測する方法を開発したと発表した。
今後、脳損傷や脳外科手術における後遺症の程度を、事前に予想できるようになるとみられる。また、記憶想起に影響を与える部位を手術で避けたり、リハビリ方針を最適化するのにも役立ちそうだ。
研究グループは、サルの脳を測定し、記憶を想起する際に活動する、前頭前野の複数の部位を含む領域を特定。これらの領域は、それぞれ協調し合いながらネットワークを形成して活動していることを突き止めた。
さらに、前頭前野の各部位における、損傷時の記憶障害の出方の違いを予測する方法を開発。過去に報告された症例の説明に成功したという。
大脳の前頭葉の前方に位置する前頭前野は、進化的に発達した脳の領域で、記憶や思考などに関与する。特に記憶を呼び起こそうとする際には、前頭前野の複数の部位が活動することが知られる。
しかし、前頭前野を損傷した患者のすべてが記憶障害を起こすわけではなく、なぜ特定の部位の損傷が記憶障害を引き起こすのか、またどうすれば記憶障害を引き起こす部位の位置や障害の程度を予測できるのかといったことは、確立されていなかった。
この研究成果によって、脳損傷や脳外科手術における後遺症の予測が可能になるとみられる。
この研究成果は、科学雑誌PLOS Biology電子版に 6月30日付けで発表された。
◎順天堂大学
http://www.juntendo.ac.jp/