4月から、生活に困窮している人に包括的な支援を行う「生活困窮者自立支援制度」がはじまった。
これまでの福祉制度は、高齢者、障害者、児童といった特定の対象者・分野ごとに展開されてきた。しかし近年、暮らしに困っている人々は、経済的な問題に加えて社会的な孤立などの問題をはらんでいるケースが増加。
同制度は、現行制度だけでは自立支援が難しい人に対し、生活全般にわたる包括的な支援を提供していくことを目的に設置された。
※関連ニュース
【介護保険最新情報vol.439】生活困窮者自立支援制度と介護保険制度との連携について(通知)
■対象になる人
「現在は生活保護を受給していないが、生活保護に至るおそれがある人で、自立が見込まれる人」が対象となる。たとえば、以下のようなケースだ。
・高齢で体の弱った親と二人暮らしを続けるうちに、地域から孤立してしまった人
・家族の介護のため、時間に余裕はあるが収入の低い仕事に移った人
・離職後、求職の努力を重ねたが再就職できず、自信を失ってひきこもってしまった人
・いじめなどのために学校を中退し引きこもりを続けるうち、社会に出るのが怖くなってしまった人
■相談窓口
都道府県および市の福祉担当部署や社会福祉協議会、社会福祉法人、NPOなどが相談窓口となる。自治体によって設置される機関が異なるため、都道府県や市町村に問い合わせるとよいだろう。
厚生労働省でも、各自治体の相談窓口の連絡先などを順次ウェブサイトで公開していく予定。すでに、4月22日現在までにまとめられた全国の相談窓口が公開されている(自立相談支援機関 相談窓口一覧(4月22日現在))。
相談窓口では、本人だけではなく、家族や周りの人からの相談も受け付けている。
■支援項目
どのような支援が必要かを支援員とともに考え、「支援プラン」を作成する。
住む場所を失うおそれが高い人には、一定期間、家賃相当額が支給される。また緊急に住まいが必要な人には、一定期間、衣食住の提供も行われる。
社会に出ることに不安がある人や、他人とのコミュニケーションに問題があり、すぐに職に就くことが難しい人には、6ヵ月~1年を上限に、プログラムに沿ってサポートや就労機会の提供が行われる。
また、相談者が自ら家計を管理できるように、家計の立て直しの助言や支援を受けることもできる。
本制度は、生活保護に至る前の生活困窮者を救う、“新たなセーフティーネット”として期待される。しかし、制度の周知はいまだ十分とはいえず、自治体の支援体制にもばらつきがあり、制度がしっかりと機能するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
◎厚生労働省 生活困窮者自立支援制度
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html