矢野経済研究所は、1月7日、介護ロボット市場に関する調査結果を発表した。
2013年度に経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」がスタートし、介護現場での普及が期待される介護ロボット。調査では、2015年度に予定されている介護保険制度の見直しで、介護ロボットの介護保険適用製品が増加すれば市場拡大が見込まれるとまとめている。
また、排泄支援や歩行支援など目的別に介護ロボットの現状や課題についても言及している。
■調査の対象:介護ロボットメーカー及び販売会社、研究機関など
■調査の期間:2013年10月~12月
■調査の方法:同社専門研究員による直接面談、電話やe-mail によるヒアリング、文献調査を併用
主な調査の結果は以下の通り。
国内の介護ロボット市場規模(メーカ出荷金額ベース)は、2011年度が1億2,400万円、2012年度は前年度比137.1%の1億7,000万円となった。2012年度は数量の拡大に同調して金額ベースも高い伸びとなるが、絶対額はまだ大きくはない。目的別にみると排泄支援と歩行支援が主となるが、介護ロボットとしてはまだ介護現場にほとんど普及していないのが実態である。
2013年度には、経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」の採択事業者が決定され、介護目的のロボット開発と普及事業が開始された。介護ロボットとして効果が明確で、安価で使いやすさを求め、開発だけでなく普及させるための支援に重きを置いている点が特徴で、2015年度までに最終製品化を目指すことになる。
採択を受けて46件のロボット開発が着手され、内訳は装着型移乗支援4件、非装着型移乗支援7件、移動(歩行)支援9件、排泄支援5件、見守り支援21件となる。
・装着型移乗支援は、モーターや弾性材、空気圧を利用する方式があり、その構造によって価格差が出ると考える。安全性や肉体的負担低減がポイントとなり、今後の実証試験を通して完成度が高められると予測する。非装着型移乗支援は、仰向けで抱き上げるものと前屈みで抱き上げる方式がある。補助具を用いたり、浴室内での使用を想定したりとメーカーによって方式や構造に違いがあり、価格差も出ると考える。非装着型移乗支援では、装着型とは異なるアプローチが進んでいる。
・移動(歩行)支援では、推進と抑速で高齢者の負担軽減と安全を確保することが求められ、シルバーカーとの違いが追求されている。低価格化することも課題となる。
・排泄支援では、座位姿勢型と寝たきり型で開発が進み、寝たきり型排泄支援については基本技術が完成している。座位姿勢型排泄支援では排水機構の採用が進んでおり、後処理不要や防臭効果などの機能が追及されている。いずれも低価格にすることが課題となる。
・見守り支援ではセンサによる離床行動の検知で様々な方式が検討されている。正確に離床行動を検知することがポイントで、今後の実証実験を通して完成度を高めていくと考える。
メーカーにより開発の進捗度やロボット構造に差があり、その内容や想定価格は今の所明らかではない部分もあるが、今後の実証試験を得て性能や効果が追及され同時に製品化に向けて仕様や価格などが煮詰まっていくものと考える。
2015年度には介護保険制度の見直しも予定され、介護ロボットの介護保険適用製品が増加すれば市場拡大の追い風となる。国による普及のための方策も期待されており、国内の介護ロボット市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、2015年度に23億円、2020年度には349億8,000万円に拡大と予測する。
◎矢野経済研究所
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