<国会議員が斬る!>軽度者切りは徒に地域格差を広げるだけ――東社協フォーラム

10月15日、東京都内にて、東京都社会福祉協議会(東社協)主催の都民フォーラム「10年後の介護や暮らしを考えたことがありますか」が開催された。

東社協は、この7月に東京都の高齢者福祉の課題と提言をまとめた「アクティブ福祉グランドデザイン」を上梓した。今後高齢化がますます進む東京で「最期まで安心して暮らすため」、課題を共有し、方策を考える場として実施されたフォーラムから、現役国会議員がパネリストを務めたシンポジウムを紹介する。

■自己負担2割は「年収290万円または280万円以上」に異論が続出
パネリストは、自民党衆議院議員の秋元司氏、公明党参議院議員の竹谷とし子氏、民主党衆議院議員の長妻昭氏、共産党参議院議員の小池晃氏の4名。

討論は、1.介護予防の市町村事業への移行、2.一定以上所得者の自己負担2割導入、3.特養の入居要件を要介護3以上に変更、4.大都市の特養の府都件外設置・サ高住の住所地特例、5.新設特養のユニット化推進、6.特養の補足給付の見直しという6つの論点に沿って各々が意見を述べる形で進んだ。

折しもこの日、介護保険制度改革に道筋をつける社会保障プログラム法案を審議する臨時国会が開会。論点はいずれも改革案の重要事項であり、現役国会議員によるホットな意見を聞くことができた。

改革案でいち早く具体化し、「軽度者切り」と批判を集めているのが論点1介護予防の市町村事業への移行。
民主党の長妻氏は「民主党が厚労省に要求して初めて出た資料」として要支援1の43%、要支援2の53%は、日常生活自立度1以上の軽度を含めた認知症であるとのデータを示しながら、「地域支援事業に移行した場合、NPOボランティア認知症対応を教育された人を用意できるものなのか」と懸念を述べた。
共産党の小池氏も、運営が市町村の裁量にゆだねられ、人員基準も運営基準もない地域支援事業の問題点を指摘し、「軽度者ほど専門的なスキルが必要なはず」と真っ向から反対する立場を示した。

また、自民党・秋元氏の「要支援1・2は介護保険制度から外れるのではなく、大きな枠組の中でやるので安心してほしい」と厚労省の見解を踏襲した説明には、長妻氏が「厚労省の説明は、お金は介護保険料から出るということだが、介護保険制度の自己負担1割に対し、地域支援事業ではそれぞれが自由に設定できるようになる」と即座に否定、「制度外」であることを強調した。

論点2の自己負担2割導入については、厚労省が提案する年収290万円または280万円の線引きに異論が続出。「年収で切ることが妥当なのか。配偶者やその収入を糧にしている家族がいるかどうかを考慮すべき」(公明・竹谷氏)、「施設入居者から自己負担2割導入になったら施設を出ないとならないのか、という心配の声も聞こえている」(民主党・長妻氏)。改革案に賛同する立場の自民党の秋元氏も、年収の額はあくまでも厚労省案で、「流動的なもの。これからの議論が必要」との見解を示した。
共産党の小池氏は、利用料の負担増は利用抑制につながり、要介護度の悪化、ひいては財政悪化につながる危険があり、「能力に応じて負担すべきなのは税金や保険料」との考えを示した。

論点3特養の入居要件については、自民党以外の3議員から「本当に施設入所が必要かどうかを要介護3以上で判断できるのか?」との意見が出た。
「公平性を保つためというが、個人の入居の必要性をどう判断するのか。個人的に要介護3以上だけを入居要件にするのは偏りがあると感じる」(公明党・竹谷氏)
要介護1・2の入居者は全体の1割だが、特別な事情があって入居しているはず。国が一律で基準を決めていいのだろうか」(民主党・長妻氏)
共産党の小池氏も、介護度が低くても認知症など見守りを必要としたり、虐待からの保護など多面的・専門的支援を必要とする人はたくさんいると指摘し、老施協が社会保障審議会の介護保険部会にて提示した「要介護3以上に制限するのはもっとも支援を必要とする時期の認知症の人に不利益」という見解も引用し、反対した。

■本質論を抜きにして進められる改革の危うさ
シンポジウム全体を通して、自民党と民主・共産党の意見の相違が明確だったのは、「一律」を巡るスタンス。
自民党の秋元氏は「(利用料の応能負担や捕捉給付の資産勘案について)一律平等は理想だが、介護保険制度維持のためにやむを得ない」と被保険者の負担や給付の一律化をやめる改革案を支持。
民主党・長妻氏は、「特養の待機者は地域によって多少があり、事情が異なるのに国が一律で要介護度3以上と決めていいのか」と仕組みの一律化に反対。共産党・小池氏は、介護支援事業を国から地方に移管することで、国民全員に一律のサービスを提供できなくなることは「生存権を保障する憲法25条に反する」と主張した。

一律の目的を財政面に置けば介護保険制度がよって立つものが損なわれ、被保険者に重きを置けば制度の存続が危惧される。どちらに振れても問題があるが、この難しい問題を考える時に参考になるのが、長妻氏が提示した「社会保障の哲学」だろう。

介護予防の地方移管は、国民全体に同じサービスを提供するナショナルミニマムか、地方にまかせるのかという選択であり、自治体にまかせることで国民間に差が出てもいい部分と差が出ていけない部分がある。それをどう区分けしていくかという哲学の問題になる。要介護1・2を介護保険から切り離すことは格差を広げることに他ならない」(長妻氏)

厚労省主導で、介護保険制度、社会保障の哲学という本質的な議論がないままに進められる改革の危うさ。国会での議論でどこまで切り込めるかに注目したい。

◎東京都社会福祉協議会
http://www.tcsw.tvac.or.jp/

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