グラクソ・スミスクライン株式会社は、脳卒中の後遺症である手足の筋肉のつっぱり(痙縮)に関する調査を実施し、6月、その結果を発表した。
脳卒中は、がん、心疾患、肺炎に次ぐ日本人の死亡原因第4位(2011年人口動態統計)であり、近年は死亡者数が減少しつつあるものの、手足のまひや、筋肉のつっぱり(痙縮/けいしゅく)、言語障害などの後遺症を伴うことが多いため、介護が必要となる原因の第1位(2010年国民生活基礎調査)に挙げられている。こうした背景から、2010年8月に、痙縮のある患者100名とその家族103名を対象に「脳卒中後遺症・痙縮の治療に関する調査」を実施した。
その結果、主に以下の傾向があることがわかった。
痙縮のある患者の介護の担い手、約9割が家族
患者の介護については、回答した家族が介護している割合が41%、それ以外の家族が29%、回答した家族とそれ以外の家族複数の割合が約17%で、合計すると約9割が家族の誰かが介護していることがわかった。
痙縮の治療経験者は約8割、その約半数が治療を中断
痙縮の治療状況については、「現在治療を受けている」40%、「過去に受けたことがある」42%と、8割が治療を受けているものの、そのうちの半数が治療を中断していることがわかった。
治療に関する理解や意識を高めるには医師・医療従事者が重要
痙縮に対する治療を受けたきっかけについては、「医師の紹介」が最多で7割(患者本人78%、家族71%)を超える。「作業療法仕や理学療法士の紹介」も2割(患者本人28%、家族21%)を超え、医師、医療従事者からの影響が大きいことがわかった。
痙縮の治療を受けない理由、本人は必要なし、家族は改善が見込めない
現在、痙縮の治療を受けていない理由としては、「日常生活に支障がない程度に回復」が全体で45%(患者本人62%、家族26%)を占め、次いで「治療を受けても改善しないと思う」が全体で36%(患者本人27%、家族47%)だった。どちらも、患者本人と家族では意識にかなりの差が開く結果となった。
認知度が低いボツリヌス療法
治療法の認知が最も高いのは「リハビリテーション」で、患者本人89%、家族90%という100%に近い数字となった。実際、患者本人の78%、家族の73%が「治療経験あり」と答えている。その一方で、「ボツリヌス療法」については認知度が低く、患者本人、家族共に44%に留まり、治療経験に及んでは患者本人8%、家族4%に過ぎなかった。
ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作り出す天然のたんぱく質ボツリヌストキシンを有効成分とする薬を筋肉内に注射する治療法のことで、筋肉の緊張をやわらげることができる。この治療法は2010年10月現在、世界80ヵ国以上で認められている。日本では、手足の痙縮のほか、まぶた、顔面、首などに関する筋肉の病気、小児脳性まひ患者などに対して認可され、これまでに9万人以上が治療を受けている。
なお、同社は、痙縮のある患者のための疾患情報サイト「脳卒中の後遺症(痙縮)」を開設しており、痙縮の診察や治療を行っている病医院を調べることができるコンテンツの提供や小冊子の配布も行っている。
◎脳卒中の後遺症(痙縮)
http://btx-a.jp/index.html
◎グラクソ・スミスクライン株式会社公式ホームページ
http://glaxosmithkline.co.jp/