平成24年度介護報酬改定では、訪問介護においては、訪問区分の変更、医療との連携など、大きな変更点があった。現場ではどんな変化、混乱があったのか。そもそも給与は上がったのか――。
日本ホームヘルパー協会は、「2012年度介護報酬改定後の影響調査」の結果をとりまとめ、結果を公表した。1,108人から回答を得た。
■給与「増えた」は1割のみ
「毎月の収入はどうですか?」という質問に対し、「前より増えた」は13.5%のみ。「そんなに変わらない」が62.1%と過半数を占め、「前より減った」も20.6%と多かった。
さらに、「前より増えた」と答えた人でも、「増えたといっても元が低い」「1人の収入では生活が難しい。子供を養えない」など、増えたとはいえ、まだまだ厳しいという声が寄せられた。また、「前より増えた」と答えた「登録ヘルパー」からは、「収入が増えた分、仕事と仕事の合間が短くなり、終わる時間が迫ると焦り出しミスに繋がっている」というコメントも。
■3分の1が、「苦情、不満が増えた」
利用者から直接、苦情、不満を言われますか――。平成24年度改定では、生活援助の時間区分が変更された。このことは、ホームヘルパー側が大変なのはもちろんのこと、利用者からの不満を生むのではないかと予想されたが、実際、「そんなに変わらない」が56.7%と最も多いとはいえ、「(苦情・不満が)多くなった」が33.1%で、「少なくなった」に比べて圧倒的に多かった。
ヘルパーからは「ゆっくりしゃべる時間もないと思われる。逆に気を遣わせてしまう」「利用者は弱い立場。制度が変わっても受けいれるしかない。不満を言っても変わらないと諦めている。時間が短くなっても現場では今までと同じ時間仕事をしている」「毎回『せわしない』『落ち着かない』『ゆっくり話をすることができない』と苦情を言われる」など、切実なコメントが寄せられた。
「看護と介護の連携についてどう思っていますか?」という設問に対しては、「連携できていると思う」は27.7%に留まり、「まだ連携できていないと思う」が52.2%とおよそ半数を占めた。そのほか、「わからない」が16.5%、回答なしが3.6%。
添えられたコメントを見ると、「連携できている」と回答した人の場合、「法人内に医療サービスがある」「同じ事務所に訪問看護ステーションがあります」「訪問看護ステーションに併殺されているので連携は取りやすい」など、同じグループ内、あるいは同じ建物、併設の建物などの場合は比較的連携が取れているようだった。
一方、「まだ連携できていないと思う」と回答した人のコメントを見ると、「NS(看護師)は上から目線で指示を出し、HH(ホームヘルパー)を軽視する傾向あり。まだまだ連携とは言い難いと思う。報酬・単位の違いが大きすぎる」「看護サマリー等はケアマネジャーさん止まりで訪問介護まではこない」など、隔たりの大きさがうかがえた。
■「ヘルパー=家政婦」のイメージ根強い
「若い世代をヘルパー職として定着させるためには何が必要ですか?」という設問で最も多かったのは、「収入保障、労働環境の改善」(57.9%)だった。次いで、「業務内容の確立と社会的評価」が38.0%。
「収入保障、労働環境の改善が必要」と答えた人の声を見ると、管理者からは「介護報酬を上げること(若い人は施設に流れている)」、「給料がとにかく安いのでいつ辞められるかいつも不安に思っている。給料を上げると保険料が上がり、手取りはほとんど変わらない」など、ヘルパーからは「ヘルパーを専門職だというなら、ヘルパーで家族を含めた生活ができるようにすること」といった指摘があった。
一方、「収入保障、労働環境の改善が必要」と回答した人からは、「ヘルパーはお手伝いと思っている利用者があり、何でもしてもらえると思っておられる」、「登録ヘルパーでは何も保障されず、生計を立てる職種にはなっていない」など、「家政婦」のようなイメージがいまだに拭えないこと、専門職としての社会的評価を感じないことなどが上がった。
今回のアンケートからは、介護保険制度の利用が進んでいる一方で、利用者本人や家族の理解は十分に伴っていないこと、その結果、ヘルパー職に苦情やいやみがぶつけられ、意欲をそぐような事態も生じていること、また、看護との連携や若手の定着など、まだまだ課題は多いこと――などが浮き彫りになった。
◎日本ホームへルパー協会
http://nihonhelper.sharepoint.com/Pages/default.aspx
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