<三好春樹氏講演ルポ(2)>認知症の高齢者の「問題行動」には意味

12月12日、老人介護の全国研修会「オムツ外し学会2012」が東京都内にて開催され、介護の専門家や医師による老人介護ターミナルケアをテーマにした講演が行われた。
オムツ外し学会の呼びかけ人であり「生活とリハビリ研究所」代表で理学療法士の三好春樹氏によるこの日2本目の講演「認知症老人のコミュニケーション」を紹介する。

三好氏は、認知症の研修会などで介護職の人に「認知症高齢者にはどうやって声かけするのがいいですか」と聞かれると、「用もないのに声をかけるんじゃない」と答えるという。

「それはコミュニケーションではないから。生活の中で必然性があるから声をかけるんですよね。『声かけしましょう』と言う人は、お年寄りのことを誰からも声をかけられない寂しい人だと思っているんです。でも、そういう人がいますか?いたとしたらまわりのお年寄りが声をかければいいし、介護職はお年寄り同士が会話するための媒介になればいいんです」

認知症だから、高齢者だから、ではなく、普通に接すればいいというのが三好氏の主張で、「お年寄りは弱者ではない。弱者が80、90歳まで生きますか」(笑)。同時に、昨今、介護の現場で行われている傾聴回想法にも疑問を呈し、傾聴ボランティアが帰った後、お年寄りがはぁーっとため息をつき、「あの人が来るとしゃべらんといけん」(笑)と言ったことなどを交え、ユーモラスに語った。

認知症高齢者ケアではさまざまな働きかけが行われているが、本質は理解されていない、というのが三好氏の考えだ。

「わざわざ声かけしたり、傾聴の時間を設けたりしなくても、お年寄りの方からコミュニケートしているんです。それに私たちが気づかず、逆に抑えようとしている。『問題行動・BPSD』といわれるものがそうで、医療ではあってはならないこととされていますが、あれは実は非言語的コミュニケーションなんです。徘徊したり、大声を出したりすることで、お年寄りが何を訴えているかを考えなくてはならない」

認知症の人が過去と現在とが混同したり、徘徊したりするのも、意味があることで、三好さんが認知症高齢者を観察したところ、過去への戻り方には法則性があることに気づいたそうだ。

「自分がいちばん自分らしくいられた時代、人に頼りにされ、生きがいを感じていた時代に帰るんです。大学教授だった人は教授時代に戻ります。助教授時代には戻らない(笑)。農家の長男だった人は、田植えと稲刈りの時期になると突然出かけていってしまう。毎回『ロシアに行く』と出かけてしまう人がいましたが、ロシアがその人にとっていい時代の象徴なんです。そのことを尊重してあげないといけない」

認知症高齢者が、妄想徘徊などの「問題行動」を起こすのは、「今の自分が自分だという気がしないから。過去に戻ることで自己確認しているのだと思う」。その時、介護職がやるべきことは、止めたり、怒ったりすることではなく、旅に出られないお年寄りは、過去に旅に出たと思って受け止めてあげること。そして、「過去に戻らなくても、自分はまぎれもなく自分だと思える現在を作ってあげることです」。

認知症高齢者の世界を、ユーモアを交えながら生き生きと語った三好氏。同時に、医療介護との違いを次のように語った。
「客観的に正しいとなれば、医療ではお年寄りを縛ったりもします。しかし、介護ではやりません。医療の客観性に対し、介護では関係性です。『人間関係を壊してまでやらなくてはならないことはない』というのが介護の原則です」

認知症高齢者を生活の中でみていくこととは、どういうことか、介護職はどうあるべきか。大きな気づきをもたらしてくれた講演だった。

◎生活とリハビリ研究所

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