<事例多数>医師も看護師も猛反対のターミナル患者を受け入れて――髙口光子氏講演レポ

12月12日に開催された老人介護の全国研修会「オムツ外し学会」で、理学療法士介護支援専門員で、介護老人保健施設「鶴舞乃城」「星のしずく」の看護介護部長を兼任する髙口光子氏が、「介護現場のターミナルケア」をテーマに講演を行った。

髙口氏は、新卒の理学療法士として入職した、いわゆる“老人病院”の話に始まり、特別養護老人ホームへの転職、「最低最悪を形にした」ような老健の改革を経て、「鶴舞乃城」「星のしずく」の開設に至るまでに経験したこと、そこから学んだことを軽快な語り口調でユーモアを交えながら紹介した。

まず、「目をキラキラ輝かせながら」入った病院では、どんどん点滴を入れられ、床ずれがあちこちにでき、男女の区別もわからないようなお年寄りたちを目の当たりにしたという。そこで医師から最初にリハビリを命じられたのは、両手両足が曲がりくねった男性。「棺おけに入るようにしてほしい」というのが医師からの依頼だった。

約10年間、その病院で過ごした髙口氏が身を持って学んだのは、法律や制度、職場環境によって、後から思えば「間違っている」と思うようなこともしてしまうということと、だからこそ「現場における最大のリスクは自分自身にある」ということ。

次に移った特養では、膵臓がんで一旦入院した入居者を再び受け入れるかでもめた。介護職は「不安だ」と言い、看護師は「責任を取れない、何もできない、死後発見は嫌だ」と反対した。それらの反対理由をケアプランに生かし、
 ・本人、家族の希望で再び入居するのだから、責任は取らなくていい
 ・何も特別なことをする必要はない
 ・定期的に見回りにいったとしても、死後に発見することもあり得る
と文書化して、家族にも伝えたところ、家族からは「家と同じですね」と言葉をかけてもらえ、職員の不安もなくなっていったという。

そうした経験で得たのは、「方向性が定まれば、人は(自分のやるべきことに)集中できる」。

さらに、「最低最悪を形にした」ような施設だった、老健の改革に携わったときには、
(1)その現場に甘んじるのではなく、「この施設はもうダメだ」と“底つき感”を抱いている人を見つけることから始め、
(2)それでもなお、「このおじいちゃんにだけは『気持ちいい風呂だ』と言わせてあげたい」などと、夢を語れる人をリーダーに据えることで、施設は、変わっていったという。

また、現在、髙口氏が看護介護部長を務める老健「鶴舞乃城」でのエピソードとしては、次のようなことを紹介してくれた。

ある男性の入居者がいよいよ最期のときを迎えようとしていたときのこと。息子さんに、最後にやってあげたいことを聞いたところ、「(本人が創業し、息子さんが後を継いで新しくした)工場に連れて行ってあげたい」。その会話をしたのが夕方で、その晩には看護師介護士も付き添って車で、その工場に連れて行った。

その男性が亡くなったとき、家族は「家族だけではできない介護でした」、介護職は「職員だけではできない介護でしたね」と話したという。
その言葉から「これからやっていく介護を改めて教えてもらった」と髙口氏。

こうした経験をいかし、2012年5月にオープンした老健「星のしずく」では、半年ほどですでに20人弱の入居者を看取っている。

◎生活とリハビリ研究所

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