11月17日に開催された本間清文氏主催のセミナー「居宅ケアマネ制度のゆくえと新ケアプラン様式案の検証」の後半では、厚生労働省が㈱日本総合研究所に調査研究を委託した「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する調査研究 ケアプラン詳細分析結果報告書」を資料として解説が行われた。
本間氏は、まず調査項目の問題点に言及した。㈱日本総合研究所は、「要介護度」「ADL.IADL」「要介護状態となった主な原因」「居住状態」の4項目のみで分析しており、このことについて驚きを隠せないと述べ、わずか4項目を分析しただけでは、利用者の生活状況は把握できないと指摘した。
『「~したい」という記述方法に捉われてしまっている事例が見られる』という分析については、本間氏が「何年も前から著作等で指摘していることであり、当たり前」とコメントし、失笑せざるを得ないとも語った。また、『長期目標と短期目標にほぼ同じことが記載されていたり』という分析に対しては、メインユーザーの85歳以上の高齢者が、どれだけ課題に対して意欲的に取り組んでいるだろうかと疑問を呈し、こうした誤解を解消するため現場の実践者は何をするべきか等の持論を展開した。
さらに「『サービスを利用しなかった場合に見込まれる今後の見通し』を想定し」という記述については、予後予測など医師にも不可能なことを介護の現場に求めることは理想論に過ぎないと語った。
そして、本間氏は、『改善可能性』がこの報告書のキーワードだと語る。たとえば「ADL.IADLに『改善可能性が高い』とされた項目がある場合が多い一方、『改善可能性が高い』事例におけるリハビリテーションの利用は少ない」「改善可能性が高いとされた利用者の7割以上がリハビリのテーションを利用してない」など、この文言は頻出するが、それらの文言の背後に国が描く理想のケアマネジャー像を読み取り、実際のケアマネジメントの観点から分析していった。
日総研が作成した新ケアプラン様式案とモニタリング表については、「現場をわかっていない人の典型的なレポート」と指摘。特に架空の事例で挙げられている、利用者が「最後までトイレで排せつしたい」というニーズを掲げ、そのために娘がポータブルトイレの介助などをしている箇所について「一見、ケアプランの理想的な文章のように見える。でも、この事例はよく見ると利用者の年齢は94歳。ということは娘は75歳前後とか、その近辺でしょう。そうした90代、70代の母子家庭でそれほどADLの自立に一生懸命な利用者・家族を在宅の現場でリアルに感じることは滅多にないはず。このレポート作成者は一度でも90代の老人や70代の介護者を見たことがあるのでしょうか」と疑問を投げかけた。
その後、新ケアプラン様式案の構造や考え方、その作成方法などを解説した後、その様式の問題点と可能性などに言及。「まさか、この新様式を一律にすべてのケアプランに適応させることはないだろう」とした上で現実的な落としどころを述べた。
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