筒井書房は、要介護者の「胃ろう・経管」など“食の提供”について言及した『胃ろうよ さようなら 〜明日はおスシを食べにいこう〜』を発行し、2カ月間で約5,000部と、専門書としては異例の販売部数を記録した。
現在、全国で26万人もの高齢者が、胃ろう造設を受けたといわれている。胃に小さな口を作ってチューブを設置し、直接胃に栄養を入れる胃ろうは、介護の現場では、主に寝たきり患者に処方され、寝ながらにして栄養状態が保たれるというメリットがある。しかし、同書の著者である竹内孝仁氏は、「胃ろうは食べる楽しみを奪う上、周囲の人たちに重症感を与えてしまい、ほとんどが完全寝たきり状態に置かれてしまう」とその危険性を訴え、ターミナル期の延命策ではない限り「無駄な胃ろう」「抜去できる胃ろう」は経口常食にすべきだと主張している。
さらに、食べる楽しみ以外にも、「胃ろうになると長生きができない」「胃ろう利用者のエネルギー量は一般的には基礎代謝量にも達していない」「胃ろうには誤嚥性肺炎が多い」など、身体的なダメージも大きいことを挙げ、少しずつでも常食に戻す必要があると竹内氏は訴える。 “胃ろう全廃 全員常食へ おスシやトンカツを食べに行こう”、著者はこのようなスローガンを掲げ、全国の特養ホームで「全員常食運動」を実践している。同書はその理論と実際の方法を丁寧に解説した専門書として、介護業界から大きく注目されている。
■書名:『胃ろうよ さようなら 〜明日はおスシを食べにいこう〜』
■著者:竹内孝仁
■目次:
第1章 実践報告
1.シンポジウムの発表中に届いた朗報/2.試行錯誤の胃ろうはずし/3.胃ろうから経口常食に戻す方法/4.なぜ常食にこだわるのか/5.介護現場は感覚がマヒしている
第2章 理論編
1.特養ホームにおける食事の実態/2.食形態が低下していく理由/3.口腔機能(咀しゃく・嚥下)/4.口腔機能の廃用症候群/5.常食についての実験/6.食形態以外の要素についての研究
第3章 さあいよいよ 胃ろうを常食へ
1.胃ろうにいたる経過/2.介護施設の実態/3.胃ろうの弊害 胃ろうはよい方法か/4.どういう手段で常食に戻すか/5.施設での実践のしかた
第4章 在宅の胃ろう者はどうするか
1.この本を読んで自信のある家族は挑戦すればいい/2.自信のない人は施設に相談〜といってもまだ少ないが/3.歯科に行こう
■仕様:B5判、88ページ
■発行:筒井書房
■定価:1,050円(税込)
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