3月17日、18日の2日間に渡って開催された第14回日本在宅医学会大会において、「多職種間交流community維持のための実践医療と介護の情報連携」をテーマに、4人のシンポジストが登壇し、シンポジウムが行われた。ここでは、2人のシンポジストの講演内容について紹介する。
■医療法人アスムス 太田秀樹理事長の話
栃木県小山市を中心に、栃木県栃木市、茨城県結城市で訪問診療を行っている医療法人アスムス。複数の地域で診療を行うなかで、「同質の在宅医療を提供しても、推進普及には差がある」「医療が提供される基礎自治体によって、在宅医療の推進に大きな格差が生じている」ことを感じるという。
その差が表れる要因として、太田氏は、次の7つを指標として挙げた。
・病院医療
・在宅医療サービス
・在宅ケアサービス
・行政(基礎自治体)、市長の姿勢・医師会
・地域連携体制ネットワーク
・地域コミュニティ
・地域住民の意識
その上で、在宅医療を推進するには、医師の行動だけではなく、コミュニティ全体の意識を変えることが重要であり、「地域ネットワークを強化することが地域ケアの向上につながる」と訴えた。
■医療法人聖徳会小笠原内科 小笠原文雄理事長兼院長の話
2006年に携帯電話を購入したことを一つのきっかけに在宅診療に積極的に取り組むようになったという、小笠原院長。
多施設からさまざまな職種がかかわる在宅医療においては、「統轄するキーパーソンである在宅ケアコーディネーターの存在が大切」と考え、同院ではケアマネジャー資格を持つ看護師を「トータルヘルスプランナー」として教育し、コーディネーター役を担ってもらっているという。
小笠原院長は、「(在宅医療においては)訪問看護師がキーパーソン」「トータルヘルスプランナーは、医療、介護、福祉の多方面の知識が豊富である訪問看護師が適任」と述べる。
同院では、トータルヘルスプランナーとして訪問看護師を配置するようになってから、がんの在宅看取り率は約95%になり、困難な独居事例でも在宅で看取ることができる体制が整ったという。
また、2011年には「岐阜在宅ホスピス安心ネット」を立ち上げ、医師一人の診療所でも24時間対応できるよう、参加医師が連携して対応する仕組みを構築している。ここでも、やはりキーパーソンは訪問看護師で、もし担当医が不在の場合は訪問看護師から情報を教えてもらい、“連携医師”が対応するという形で、「医師を全員で支える」仕組みを整えている。
たとえば、小笠原院長は、在宅医が少ない地域での在宅緩和ケアでは“教育的緩和ケア”も実施。患者宅に近い、在宅医療の経験の少ない医師が主治医となり、訪問看護ステーションと連携しながら、小笠原院長が携帯テレビ電話やiPadを活用して遠隔診療を行いながらバックアップしている。
「コーディネーターがしっかりしていれば、生活を支えるだけではなく、看取りまでできる」また、主治医が本当に困ったときには経験豊富な医師が行くという形があれば、外来だけではなく在宅も診ようという医師、診療所が増えるだろう、と述べた。
シンポジウムの最後に行われた質疑応答では、「コーディネーターが非常に大事という話があった。訪問医療においては、訪問看護師がメインでやるべきで、訪問看護師に情報を集めるべきでは?」と、会場の参加者から質問が挙がった。
これに対し、小笠原院長は、「一番大事なのは看護師と考えている。それに医師がうまく連携する形のシステムをつくっている」と回答。
シンポジストの一人であった順天堂大学教授の田城孝雄氏も、「『看護師あっての在宅医療』ということは間違いないと思う」と考えを述べた。
――在宅医学会レポ(3)へ続く
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