独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部は2月19日、禁煙後の糖尿病リスクを検討した研究の結果を発表した。
今研究は、全国11箇所の保健所管内の住民のうち、40〜69歳の5万人の男女を、5年間の追跡調査を行ったもので、新たに禁煙した人の糖尿病発症のリスクと、更にその後の5年間の追跡調査を行い、非喫煙者、過去喫煙者、現喫煙者のリスクと比較したもの。
それによると、男女ともに新たに禁煙したグループの糖尿病発症のリスクは非喫煙者よりも高くなった。また、新たに禁煙した男性のうち、大きな体重増加の無かったグループ、追跡開始時の肥満度(BMI)が高かったグループ、喫煙量の多かったグループ等に、高いリスクがみられた。ただし、身体活動度の高いグループではリスクは上がらなかった。
過去に喫煙経験があった男性を調べたところ、禁煙してから5年間は糖尿病発症リスクの上昇がみられ、その後のリスクは低下しているという傾向があることがわかった。
このように、禁煙をした人にも一定期間の糖尿病リスクの高まりがみられるということは、国外の研究でもいくつか報告がある。禁煙に伴う体重増加がその理由の1つと考えられるが、今回の研究では体重が増えないグループでもリスクが上がっていた。インスリン抵抗性への影響や、喫煙による膵臓のβ細胞への悪影響が禁煙後に形を変えて続くなどのメカニズムが考えられるが、まだ詳しいことはわかっていない。
本研究の結果より、禁煙に成功した人もすぐには安心することなく、しばらくは糖尿病発症リスクの高まりがあることに留意する必要があることがわかった。適正な体重を保つことはもちろんだが、禁煙に体重増加が伴わなかった人、喫煙量の多かった人は注意が必要だ。そして禁煙後少なくとも5年間は、健診をきちんと受診する等、自身の健康に充分に配慮する必要がある。
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◎独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部
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