総合ケア推進協議会は、11月19日、介護・医療従事者へのスキルアップを目的として、資格取得キャリアカレッジ第1回キャリアアップセミナーを開催した。セミナーでは、「ケアに活かす傾聴術」「認知症の診断・治療・ケアについて〜新規治療薬の話題も含め〜」、ディスカッション「これからの時代に求められるトータルケアとは」の3つのプログラムが行われた。
「ケアに活かす傾聴術」では、看護師・救急救命士であり医療コーディネーターの堀エリカ氏が、医療・看護・福祉などあらゆるケアで求められる「傾聴」の目的と方法について講義した。
医療コーディネーターとして、患者が納得して医療を受けられるようサポートしている堀氏は、ケアの現場で求められる傾聴とは、患者の意思決定に働きかけ、自分で問題解決ができるように導く「能動的な傾聴」だと語った。講義では、まず、聞く=日常的に人の話を聞くこと、聴く=耳を傾け、目も心も使って聴くことの違いについて説明し、ケアの現場で必要な傾聴のスキルを、ケーススタディを織り込みながらわかりやすく説明した。
能動的な傾聴の基本は、理解と同意。相手の話に「そうですか」とあいづちを打ち、「あなたを受容していますよ」と伝えることで、話をしやすい雰囲気を作る。フィードバックも大切なテクニックで、「『眠れないんだ』と言われたら、『なかなか眠れないんですね』と表現を少し変えて返し、話を理解していることを伝えるのがフィードバック。このやりとりを通し、話し手は自身の抱えている問題を整理・理解できるようになり、自分で問題を解決する方へと向かえるようになります」と堀氏。
傾聴においてNGなのが、聴き手の意見を押しつけたり、話し手の考えを変えたりする行為。そのために求められるのが、批判しない・同情しない・教えようとしない・評価しない・励まさないの「5ない」の徹底。
「辛い経験を聴き、同情に陥らないためには、『問題所有の原則』を意識することが大切。問題を抱えているのは、あくまでも話し手の患者さんや利用者さん、ご家族です。ケアする人が相手の感情に同化して巻き込まれてしまうと、依存の感情を引き起こし、問題解決の妨げになってしまいます。共感と同情は違うことを理解してください」
人の心理への深い理解も求められる傾聴は、ハードルが高いと感じるが、「傾聴で大切なのは、とにかく場数を踏むこと。最初から完璧にやろうと思わず、試行錯誤しながら身につけていって」と堀氏。また、神経を集中させる傾聴は、聴き手にとって多大なエネルギーを必要とするもの。「ひとりで抱え込まない、スタッフに協力してもらうなど、ストレスをためない工夫をして。オンオフの切り替えをしっかりする、リフレッシュする趣味をもつのもおすすめです」とケアする人の立場に立ったアドバイスもなされた。
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