株式会社ニチイ学館は、10月14日(金)、「平成23年度 事例研究発表会」の全国大会を開催した。
この大会の目的は、介護現場の様々な事象を「科学的・客観的」に検証することで専門的知識を身に付け、個々のニーズに合わせた介護を実現すること。また、その研究の成果を全社会的に共有することで、サービスの質を向上させ、ヘルスケア事業の発展につなげていくこと、としている。
今回の研究テーマは、「認知症介護」「リスクマネジメント」「医療連携」「介護予防」の4テーマ。ニチイの全介護サービス拠点(約1200カ所)を対象に、事例研究を募集した。全支店(97支店)において管轄する介護拠点の事例研究から1つを選出。さらに、本社選考において、優秀な8組の事例研究が選出された。また、今回は株式会社ニチイケアパレスから1組も選ばれた。
このうち、平塚支店のニチイケアセンター平塚湘南は、「他社グループホームからほほえみへの転居」と題し、アルツハイマー型認知症と前立腺肥大症を患う89歳の男性の事例を発表した。男性は、他社のグループホーム入居中に、暴言や暴力が理由で退去と精神科病院の入院をすすめられていた。男性の家族は悩んだ末、「身内に紹介できる施設」として紹介された同センターに入居。センターではまず、暴言や暴力は職員の先入観や過剰介護、認知症ケアの理解不足と考え、専門医などの医療機関や家族との連携を深めた。また、ケアプランの見直しや介護職員の統一した介護を目指すなどした。その結果、暴言、暴力はなくなり、機能回復訓練で階段の昇降なども安定したという。
また、岐阜支店のニチイケアセンター茜部は、「食べることを支える〜医療連携により改善した摂食嚥下障害〜」と題し、脳梗塞で右片麻痺となり、生活全般に介助が必要な76歳の女性の事例について発表した。女性は、脳梗塞の後遺症による摂食嚥下障害があり、同センターでは「むせ込みが軽減し、誤嚥せずに口から食事摂取が継続できるように介助したい」と考えた。そこで、介護計画において、食事介助法や姿勢の調整、食形態の見直しを実施することで食事摂取状況が改善。さらに、より専門知識の評価が必要であると考え、言語聴覚士の介入に至った。その結果、むせ込みは劇的に減少。介護職員も不安なく食事介助ができるようになった。
出場した9つの事例研究発表者は以下の通り。
■事例研究発表者:
1)「こんな姿は見せたくない〜いつまでも自分らしく〜」札幌支店・ニチイケアセンター小樽奥沢 山下梢
2)「まず、お茶を一杯いかがですか」宇都宮支店・ニチイケアセンター大田原中央 増田美由紀
3)「食べることを支える〜医療連携により改善した摂食嚥下障害〜」岐阜支店・ニチイケアセンター茜部 増田有利江・尾藤祥江
4)「他社グループホームからほほえみへの転居」平塚支店・ニチイケアセンター平塚湘南 山崎径代
5)「届け私の想い」ニチイケアパレス・ニチイホームたまプラーザ 松井カンナ
6)「母と暮らしたい」神戸支店・ニチイケアセンター川西 田中知己
7)「認知症介護における声掛けと誘導」高松支店・ニチイケアセンター古高松 秦泉寺崇
8)「認知症の周辺症状で悩みながらも、在宅生活を継続するお客様への支援を通して」宮崎支店・ニチイケアセンター神宮 川越光裕
9)「震災後の認知症高齢者をとりまく変化とそのケア」盛岡支店・ニチイケアセンター釜石 前川寛
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