東京都は9月15日、認知症シンポジウム「認知症の人と暮らす」を都庁第一本庁舎で開催した。当日は、応募した都民ら550人で広い会議場は埋め尽くされた。
第一部の基調講演では、「認知症を理解し、ともに暮らす」をテーマに、東京都健康長寿医療センター研究所研究部長の粟田主一氏が講演。
粟田氏は所属する都健康長寿医療センターに所属しながら、仙台市立病院で認知症疾患センター科長を兼務しており、最初に津波の被害を受けた仙台市内の無残な写真を紹介しながら、改めて気づかされたこととして、「地域には認知症の人が数多く暮らしていて、中には一人で暮らしている高齢者もかなりいる。
認知症があっても、住み慣れた家、住み慣れた地域があれば生活できるが、家や地域が失われれば病状は容易に悪化し、生活は破綻する」と、自らが被災地で見聞し、かかわった認知症の人の現状について報告。そして、改めて「認知症のための医療資源も介護資源も、現地では圧倒的に不足している」とし、最後に頼りになるのは、「認知症のことを理解してくれている家族や地域の人々こそが、大切な社会資源である」ことに気づかされたという。
全国の「もの忘れ外来」を受診する高齢者の診断名は、アルツハイマー型認知症と脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症が60%以上を占め、次いで脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉編成症、正常圧水頭症、アルコール性認知症、外傷による認知症などの診断があると解説。代表的な疾病について、脳のどの部分が障害され、どのような症状が起こるかをわかりやすく解説した。
アルツハイマー認知症では、視空間認知の障害、言語理解の障害、近時記憶障害が特徴的で、そのため、時間や人、場所のつながりが阻害されて不安や混乱を招き、不眠やうつ、妄想、幻覚、徘徊、興奮などの周辺症状が現れる。
一方、レビー小体型認知症は視空間認知の障害、視覚認知の障害やパーキンソン症状意識レベルの変化などが障害されるため、錯覚や幻覚が出現しやすく、夜間行動異常が現れやすいなどの症状が特徴的となる。
また、前頭側頭型認知症では、実行機能障害、脱抑制症状、発語の障害などが現れるため、突然その場を立ち去る「立ち去り行動」、万引きなどの「反社会的行動」などの症状が現れることがあるという。発語障害(進行性非流暢性失語症)も見られるが、ものを認識する能力が障害されるわけではないので、絵を描く能力に秀でた人などもいるという。
家族が認知症になっても、制度としての医療や介護以外にも、家族的支援を提供する主体としてのコミュニティーやさまざまな地域活動(介護予防事業など)などの情報を知り、相談することで頻度の高い日常生活支援を受けることが重要だとした。
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