糖尿病診断アクセス革命事務局(代表:矢作直也・筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科准教授)は、30代〜60代の主婦300人を対象に、健康診断の受診状況などの調査を実施した。
潜在患者も含め、日本の糖尿病人口は1000万人を超えると言われている。糖尿病対策には「血液検査を受ける」「異常値が出たら医療機関を受診し、正しい対策を行う」ことが不可欠だが、定期的に医療機関を受診している糖尿病の人は全体の4分の1に満たないことが厚生労働省の調査で明らかになっている。
こうした現状を受け、「糖尿病診断アクセス革命」では、最新の医療技術「指先採血によるHbA1c測定」による糖尿病スクリーニングを街の薬局の店頭で行えるようにすることで、未治療・未発見の糖尿病や糖尿病予備群をすくい上げることを目指している。今回の調査では、特に健診受診率が低いとされる主婦層を対象に、健診の受診状況や、自分や家族の健康に対する意識、糖尿病の理解度などを調べたほか、糖尿病家系やBMI25以上のハイリスク層に着目した分析結果も発表しており、血糖値が気になる世代の健康管理の見直しに役立てることもできそうだ。
【調査概要】
調査方法:インターネット調査
調査対象:30代〜60代の主婦(会社員・公務員を除く)300人
調査期間:2011年9月14日〜15日
調査結果の主なトピックスは、以下の通り。
■健診を1年以上受けていない主婦は半数以上
健診を1年以上受けていない(いつ受けたか覚えていないを含む)主婦は、55%で半数以上。とくに30代主婦では80%が受けていないと回答し、40代48%、50代48%、60代43%と比べて極端に受診率が悪いことが明らかになった。健診を1年以上受けていない(いつ受けたか覚えていないを含む)主婦に受診しない理由を尋ねたところ、「面倒」が81%、「病気がわかるのがこわい」が57%だった。
■8割が「自分より家族の健康を気づかいがち」だが、3人に2人が「本当は自分の健康が心配」
「自分より家族の健康を気づかいがち」な主婦が80%にのぼる一方、3 人に2 人(66%)は、「本当は自分の健康が心配」と回答している。「自分より家族の健康を気づかいがち」な意識は、30 代が87%、40 代が89%で特に高く、中でも30 代は健診受診率が極端に低く、子育てなどで自分の健康に気を配る余裕がない状況が読みとれる。
■自分の健康で心配なことは、乳がん、子宮がんなど女性特有の病気が7割
自分の健康で心配なことは、女性特有の病気(乳がん、子宮がんなど)が71%。血糖値への意識は27%で、コレステロールの45%と比較しても低いことがわかった。特に30 代で血糖値を心配しているのはわずか13%にとどまり、血糖値への注意はきわめて低いと言える。
■インスリンがすい臓から分泌されるホルモンだと知らない人は半数近くも
糖尿病の理解の基礎をなすインスリンへの理解を見てみると、インスリンがすい臓から分泌されるホルモンであることを知らない主婦が47%も存在する。また、インスリンが血糖値を下げる働きをすることを知らない人は21%だった。インスリン治療についての誤ったイメージを列記したところ、誤解の傾向には年代ごとに相違がみられ、30 代では「一度始めたら一生続ける必要がある」が72%、40 代では「注射が痛そう」が53%、60 代では「糖尿病が悪化した際に行う最後の治療」が63%で、それぞれが他の年代より高く出ている。
■家族に糖尿病患者がいるのは3割。その3割強が「自分が糖尿病になるとは思わない」と回答
家族(血縁)に糖尿病患者がいると答えた主婦は全体の31%。血縁に糖尿病患者がいれば、糖尿病の発症リスクは高まるにも関わらず、1 年以内に健診を受けていた人はその中の39%にとどまった。また、家族(血縁)に糖尿病患者がいる主婦の31%が「将来、自分が糖尿病になるとは思わない」と回答し、がんなどに比べ、糖尿病は他人事化しやすい疾患と言えそうだ。
■“ポッチャリ主婦”の3人に1人が健診を5年以上受けていない
日本人は体質的に糖尿病になりやすく、糖尿病家系とともに、肥満などにも注意が必要。そこで、BMI別に回答を分析したところ、BMI25以上の肥満者=ポッチャリ主婦の健診受診状況は、5 年以上受けていない(「いつ受けたかおぼえていない」を含む)主婦が3 人に1 人(32%)で、BMI22.0〜24.9の29%、21.9以下の23%に比べて悪いことがわかった。また、ポッチャリ主婦は、「自分より家族の健康を気づかいがち」な人84%で、22.0〜24.9の82%、21.9以下の79%より多かった。同時に「本当は自分の健康が心配」な人も81%で、BMI22.0〜24.9の68%、21.9以下の62%に比べて高い数値を示した。
自分の健康については、51%と半数が血糖値を心配しており(22.0〜24.9は37.8%、21.9以下は17.7%)、84%が将来、糖尿病になるかもしれないと不安を感じていることが明らかになった。一方で、ポッチャリ主婦の健診に対する意識を見ると、「面倒」が76%、「病気がわかるのがこわい」が60%と高い傾向にあり、糖尿病の治療への恐怖心から現実を逃避し、健診を避けている可能性が示された。
■最寄りのドラッグストア・薬局で血糖値の測定できるなら、半数近くが利用を希望
最寄りのドラッグストア・薬局で血糖値の推移が簡単に測定できるなら、「利用したい」と回答した主婦は46%だった。調査では、ドラッグストアや薬局など生活圏内の身近な場所でHbA1c(過去1〜2 ヵ月の血糖値の推移がわかる)を手軽に測定できる環境を整備すれば、「忙しい主婦でも糖尿病の診断にアクセスできる機会を増やすことができるだろう」とまとめている。
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